【コロナ禍なのに】クルマの売れ行き、悪影響が最小限で済んだ背景 過去4年の平均と今年の実績を比較

公開 : 2020.12.29 08:25  更新 : 2021.10.09 23:42

中古車販売、6月から例年比例プラス

新車販売と同じように、一般社団法人 日本自動車販売協会連合会が公開している過去4年のデータを見てみた。

ただし、中古車は販売では軽自動車は除外されている。登録車だけの数字だ。

中古車販売の2020年の実績は、年間を通すと例年と同等と言う結果になる。
中古車販売の2020年の実績は、年間を通すと例年と同等と言う結果になる。    鈴木ケンイチ

中古車販売の2020年の実績を見ると、やはり新車販売と同様に、5月が79%と、最も低い数字となった。緊急事態宣言下なのだから当然だろう。

しかし、驚くのは翌6月にはすぐに例年比を超える数を記録。そして10月まで連続で例年比オーバーが続く。

11月の数字こそ、前年比マイナスだが、その差はごくわずか。12月も前年と同等の数が売れれば、なんと、年間を通すと例年と同等と言う結果になる。

2020年の前半は悪かったが、後半に取り返して、プラスマイナス・ゼロにしてしまったのだ。驚異の成績と言えるだろう。

ちなみに輸入車ブランドはどうかと言えば、日本自動車輸入組合が発表する数字を見ると、2020年1~11月までの販売台数は、前年比で84.5%にとどまる。

ただし、ジープポルシェシトロエンフェラーリといった趣味性の高いブランドは前年比100%以上を確保。コロナ禍に負けない強さを見せている。

一方、日本メーカーの輸入車は、前年比117.2%と増えている。これは、日産が発売した新型車キックスが、タイで生産した逆輸入車だったためだ。

売れ行き悪影響 最小限で済んだワケ

1年を通した結果を見ると、意外にもコロナ禍によるクルマへの売れ行きの悪影響は最小限度ですんでいた。

その理由は、いくつもあるはずだ。

人気のSUVは、昨年暮れに登場したライズ/ロッキーを筆頭に、日産キックス、ヤリス・クロス、ハリアーなどが投入された。
人気のSUVは、昨年暮れに登場したライズ/ロッキーを筆頭に、日産キックス、ヤリス・クロスハリアーなどが投入された。

まず、想定できるのが「公共機関を利用したくない」という人の増加だ。

クルマは、言ってしまえば移動できるプライベート空間である。クルマから外に出なければ、どれだけ走り回ってもコロナに感染するリスクは、ほぼゼロとなる。

そのためバスや電車といった公共機関ではなく、クルマを利用したいという人が増えたことが、販売好調の理由でなないだろうか。

「コロナ禍だからこそ売れた」というわけだ。

また、「今年は魅力的な新型車が多かった」というのも、クルマの販売好調の理由のはず。

トヨタのヤリス、ホンダのフィット、日産のノートという、ベストセラーのコンパクトカーの新型車があいついで登場している。

また、人気のSUVも、昨年暮れに登場したライズ/ロッキーを筆頭に、日産キックス、ヤリス・クロス、ハリアーなどが投入されている。また、昨年暮れにスズキのハスラー、夏にダイハツタフトという、軽自動車のクロスオーバーも登場している。

さらに、日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したスバルレヴォーグをはじめ、マツダMX-30、ホンダのEVであるホンダeなど、話題のモデルも多かった。

発売は先だが、日産のフェアレディZのプロトタイプやEVのアリア、2021年発売予定のスバルBRZの発表なども注目を集めた。

コロナのリスクを下げるクルマと言う存在が見直され、それにタイミングよく魅力的な新型車が登場して、購買マインドが高まったのだろう。

コロナ禍という厄災の中でも、2020年の日本の自動車産業はギリギリのところで踏ん張ったのだ。

これこそが、日本の自動車産業の底力なのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。

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