【日本車がどうしても勝てない「聖域」】 アメリカでビッグ3のピックアップトラックが大人気の理由とは?
公開 : 2021.01.05 07:05 更新 : 2022.03.25 18:50
米でピックアップが必要とされる理由
こうしてデータを見ると、トップ3が米国製ピックアップトラックは近年も変わることがなく、4位以下にずらりと日本車がランク入りしている。
特に近年強いのはトヨタRAV4に代表される小型SUVだ。ホンダCR-Vや日産ローグとともにトヨタ・カムリやトヨタ・カローラ、ホンダ・シビックを超える人気となっている。SUVでも乗用車でも日本車が圧倒的に強いことがよくわかる。しかし、米国ピックアップが占める「聖域」トップ3にはなかなか食い込めない。
この理由は何なのだろうか?
そもそも、アメリカではピックアップトラックの人気が高い。というのも、アメリカではピックアップトラックが必要とされる場所が非常にたくさんあるからだ。ピックアップトラックが活躍するおなじみのシーンと言えば農業や牧畜業だろう。
アメリカの農地は約3億9100万エーカーあり、その面積はアメリカ48州(ハワイ・アラスカを除く)の約20%にあたる。さらに、家畜の飼料を作るための土地と牧草地を合わせると、7億8100万エーカー超となり、アメリカ48州の41%にあたる。農地と家畜を養うための土地であの広大な本土の6割以上が使われていることになる。
農地や牧草地と自宅を移動するクルマとなれば、ピックアップトラック以外の選択肢はなかなかないということなのだ。ちなみに、アメリカ48州に占める都市部の面積の割合は、わずか3.6%である。
そもそも、ピックアップが必要とされる生活や仕事の環境が主流なのだから、ピックアップが売れるのは道理にかなっている。
日本車が「聖域」に食い込めないのはなぜ?
アメリカに本社を持つ大手マーケティング会社の広報担当者に話を聞いてみた。
「その理由はとてもシンプルである。ピックアップトラックとアメリカ人はとてもかかわりが深い。免許を取ってすぐ買う、乗るクルマといえば家にある古いトラックだったり、中古車店で買う安いトラックだったり…それはもう50年以上前から続いていることである」
「アメリカ人はクルマ選びに関しては、日本の皆さんが思っているよりとても保守的であり、フォード、ダッジ、シェビーはこれまで数多くのピックアップトラックを販売してきたため、アメリカ人がピックアップトラックに求めているものを熟知している」
「タコマやタンドラなど、日本のピックアップトラックも性能や品質がよくスタイルもとても魅力的になってきた」
「しかし、長年アメリカ製のピックアップトラックを乗っているアメリカ人にしてみれば『いいクルマなのはわかる。だけど何か違う』という気持ちがあるのだと思う」
「もしくは、ふだんの足にカローラやローグに乗っていても、ピックアップだけは別物と考えているのかもしれない」
「かつて、20年以上前に日本でクライスラー・ネオンという小型車が販売された。安価でコンパクトなアメリカ車として仰々しく発売された。しかし、実際はほとんど売れまなかった。GMサターンやシボレー・キャバリエなど比較的小型なクルマもダメだった。右ハンドル化しても安くしても日本人が好むクルマにはなれなかった」
「日本製ピックアップトラックは品質も性能、耐久性もアフターサービスも非常によいので、これから売れていくと思うが、トップ3に入るような台数は難しいだろう」
たしかに90年代半ば以降、小型のアメリカ車が日本で販売されたがさっぱりだった。日本製ピックアップがそこまでズレているわけでは全くないが、やはりクルマに対して保守的なアメリカ人にとって「何か違う」のだろう。
とはいえ、近年トヨタ・タコマの人気がジワジワ上昇している。2017年は21位、2018年は14位、2019年は12位と年々、その順位を上げている。また、RAV4もとくに新型になってからは4位の座を死守しており、3位のラムまたはシルバラードとの差も10万台前後にまで縮まってきている。
日本車勢がアメリカ市場の「聖域」に食い込める日もそう遠くはないかもしれない。