【V8マスタングを残すために】フォード・マスタング・マッハEへ試乗 最大609kmの純EV 前編
公開 : 2020.12.31 19:05
自動車を民主化させたフォードにとって、歴史的なモデルとなるマスタング・マッハEへいよいよ試乗。マスタングという名前にふわさしい内容なのか、電気自動車を民主化させるだけの能力は備えているのか、英国編集部が試乗しました。
マスタングという名のクロスオーバーEV
フォードは、新しいマスタングを発表した。電気自動車として。
写真のとおり、新しいマスタング・マッハEは2ドアクーペではない。高めの車高が与えられた、4ドアのクロスオーバーだ。電気モーターは1基か2基かを選択でき、バッテリーは大きく重たい方か、少し小さく軽い方を選べる。
航続距離はトップスペックで609km。現在のテスラ・モデルXと同等で、ポールスター2やジャガーIペイス、メルセデス・ベンツEQCなどよりは長い。
フォードの純EVとして、重要なモデルとなる。マスタング・マッハEが成功するのなら、フォードの腕前が見事だった、ということだ。
マスタングというクルマを古くから知る人にとって、新しい純EVがマスタングを名乗ることに、抵抗を感じる部分もあるだろう。ドライビング体験にも、相応の期待がかかってくる。実際、想像していたより走りは良かった。車体の重さからすれば。
新しいマスタング・マッハEは、わたしたちが思い浮かべる今までのマスタングとは違う、マスタングだ。ディアボーン工場で5.0LのV8エンジンを降ろして、電気モーターに載せ替えたわけではない。
フォードが守り抜いてきたポニーカーのアイコンを、打ち消すために登場したのではない。むしろ、ポニーカーの寿命を可能な限り伸ばすために登場した、と考える方が良いだろう。
フォードとしてのグローバルモデル
世界中の自動車メーカーは、多額の反則金の支払いを少しでも減らすために、量産モデル平均でのCO2排出量の削減に必死だ。実際、2020年は多くの電気自動車やプラグイン・ハイブリッド(PHEV)が登場した。
欧州でV8エンジンのマスタングを数多く販売するフォードも、蚊帳の外ではない。様々な対策に取り組んでいるものの、反則金の軽減につながる目立った成果は得られていなかった。でも純EVなら、CO2を大幅に減らすことができる。
フォードは2014年から、電気自動車の開発に取り組んでいる。マッハEより、小さく手頃なクルマという可能性もあっただろう。欧州のメーカーは、そんな純EVをリリースしている。従来のクルマを補完するようなモデルとして。
しかし数年前、フォードのデザイン部門は「ショールームの真ん中で展示できる、純EVにしたらどうだろう。マスタングのようにデザインし、販売し、誇りに思えるようなクルマとして」。と考えた。
日産のリーフやフォルクスワーゲンのI.D.3などは、欧米で数多く売れている。フォードも、北米を中心とする世界中の市場で展開できる、グローバルな純EVモデルが必要だった。大きいボディに長い航続距離を持つ、利便性の高いクルマだ。
それを実現するには、価格も高くなる。世界的に通じるプレミアム・ブランドのような存在も必要だった。