【V8マスタングを残すために】フォード・マスタング・マッハEへ試乗 最大609kmの純EV 後編
公開 : 2021.01.01 19:05 更新 : 2021.05.18 16:15
現実的な環境では354kmから482km
コーナリング時の姿勢制御も良好。隆起部分などを通過すると、サスペンションの硬さや、車体の重さを感じさせる。機敏と呼べるほどではないが、操縦性は正確。現在の純EVとしては、グリップ力も高い。
試乗車は四輪駆動ながら、コーナー脱出時にはリア寄りのトルク配分を感じさせる場面もあった。ナチュラルなバランスに優れた挙動を好むなら、きっとうれしく感じるものだと思う。
ただし、今までのマスタングのハンドリングとは異なる。エントリーグレードの後輪駆動版でも同様だろう。
優れたボディの落ち着きやロードホールディング性を備え、運転を楽しみたいドライバーでも納得できる範囲にはある。アウディeトロンやジャガーIペイスなどのように。
航続距離は、スタンダードレンジと呼ばれる68kWhのバッテリーで、439kmがうたわれる。エクステンドレンジ版の88kWhなら、609kmまで伸びる。どちらもシングルモーターの後輪駆動版での距離で、ツインモーターの四輪駆動なら短くなる。
ツインモーターにエクステンドレンジ・バッテリーが載った試乗車の場合は、WLTP値で540kmとなっているが、当日は寒い12月というこであまり伸びなかった。満充電で走れた距離は、複合的な条件で約418kmだった。
おそらく平均的な現実環境では、後輪駆動のスタンダードレンジで354km、エクステンドレンジで482kmといったところだろう。温度が高くなれば更に伸びる可能性はある。それでも、マッハEのライバルより、航続距離は長い。
多くの人に受け入れてもらえる純EV
マスタング・マッハEを購入すると、家庭用11kWの交流充電器が付いてくる。急速充電としては、レンジエクステンダー版なら最大150kWまでの直流充電器に対応。最速1時間以内で、80%の電気を蓄えることができるという。
スタンダードレンジの場合は最大115kWhまでと制限されるが、バッテリー容量が小さい分、80%までの所要時間は変わらない。充分に早いといえる。
フォード・マスタング・マッハEを購入するということは、マスタングという名前を純EVにフォードが与えた、という事実を受け入れることにもつながる。長年のマスタング・ファンには、難しいかもしれない。
一方で純EVへシフトしつつある自動車市場全体で見れば、多くの人に受け入れられる内容だと思う。ゼロ・エミッションのファミリーカーとしてデザインはスマートだし、実用的な航続距離を持ち、満足のいく動的性能を備えている。
同等の内容を持つ純EVのライバルと比べれば、価格も高くは感じられないはず。486psのGTグレードも、追って登場予定となっている。
フォード・マスタング・マッハE エクステンドレンジAWD(欧州仕様)のスペック
価格:5万7980ポンド(782万円/試乗車)
全長:4712mm
全幅:1881mm
全高:1597mm
最高速度:112km/h
0-100km/h加速:5.1秒
航続距離:540km
CO2排出量:−
車両重量:2107kg
パワートレイン:ツイン交流同期モーター
バッテリー:88kWh(水冷/使用可能容量)
最高出力:350ps
最大トルク:59.0kg-m
ギアボックス:−