【GT-Rという孤高のクラス】日産GT-R ニスモへ試乗 27kgの軽量化 新ターボで600ps
公開 : 2021.01.02 19:05 更新 : 2021.03.05 18:51
GT-Rという独自のクラス
車内に足を踏み入れると、スウェード風素材で巻かれたステアリングホイールと、サイドサポートに優れるレカロ製バケットシートが迎えてくれる。インテリアデザインは2017年に大幅な刷新を受け、カーボンファイバーが増えてレザーのステッチも良くなった。
メーターパネルにはアナログのメーターが残され、センターモニターなどに集約されず、実際に押せるボタン類も多く並んでいる。見た目は少し古く感じられるものの、操作系をすべてデジタル化させたモデルの一部よりは、扱いやすいと思う。
価格は安くない。GT-Rのニスモ仕様の場合、2015年の英国価格は12万5000ポンド(1687万円)だった。2017年に一度値上がりしていたが、2021年のGT-R ニスモは18万95ポンド(2431万円)へ、一気に高くなってしまった。
2シーターでミドシップのスーパーカーなら、納得できるかもしれない。でも日産GT-Rは違う。
車重は1725kgもあるものの、アストン マーティン並みの高級感はない。もちろん、ポルシェ911ほどコンパクトでもない。直接的なライバルはいない、GT-Rという独自のクラスに属しているモデルだといえる。
走りもGT-R孤高のものだ。硬く、激しい。ダンパーにはコンフォートと記されたモードもあるが、ジョークかと思えるほど硬い。
GT-R ニスモを、長距離が快適なクルマだとは考えない方が良い。舗装の欠陥を逐一教えてくれる。ほんの少しでも。だが速度域が高くなるほど、その硬さも穏やかに感じられてくる。
速度を上げるほど良くなるハンドリング
ステアリングの操舵感は低速域ではとても軽く、直進状態から少し切り込んだ程度では、目立った印象がない。しかしさらに数度切り増ししていくと、突然GT-Rがクイックに反応し始める。
最初は戸惑うものの、操舵時の重さが増え、安定性も増してくる。路面の感触が、手のひらへ伝わるようになってくる。さらに速度を上げれば、さらに良くなる。
ブレーキはどの速度でも好感触。カーボンセラミック製のディスクが温まってくると、最高のベダルフィーリングが得られる。滑らかな路面で速く走っている時の方が、穏やかに運転している時より、わだちの影響なども受けにくい。
高次元のシングルシーターのレーシングマシンや、スポーツ・レーシングカーは、このような特性の傾向が強い。ドライバーがタイヤとブレーキの温度を保てないと、制動力やグリップ力は、スピードを支えきれないところまで低下してしまう。
もちろん、GT-R ニスモはそこまで激しいモデルではない。1700kgの車重がある、ナンバー付きのモデルだ。
ペースを落とすと、得られる体験の濃度は薄くなっていく。雨の日では、充分にタイヤやブレーキを温めることも難しい。でも、GT-Rのポテンシャルを引き出す努力をする価値はある。
タイヤは、想像以上に路面を掴む。コーナリング中にブレーキを穏やかに緩めると、ノーズがダイレクトに反応。アクセルペダルを踏み込むと、4本のタイヤへ伝わるパワーが分配され、リア寄りの挙動で加速していく。自然で不安感もない。