【詳細データテスト】マクラーレン620R レースカー譲りの硬さとうるささ 温度依存性の強いタイヤ それでも手に入れたい
公開 : 2020.12.26 20:25 更新 : 2021.01.06 23:21
マクラーレンが生み出した、レースカー直系のロードゴーイングカーという、なんともソソる620Rをテスト。一般的なスポーツシリーズを動力性能で大きく凌げなかったのは予想外でしたが、シャシー性能はじつに魅力的でした。
もくじ
ーはじめに
ー意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
ー内装 ★★★★★★★★☆☆
ー走り ★★★★★★★★☆☆
ー使い勝手 ★★★★★★☆☆☆☆
ー操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆
ー快適性/静粛性 ★★★★★☆☆☆☆☆
ー購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆
ースペック
ー結論 ★★★★★★★★☆☆
はじめに
モータースポーツで培われた正真正銘の信頼性を自社製品すべてに注ぎ込むようなメーカーであれば、620Rのようなモデルは間違いなく成功するはずだ。
マクラーレンのレーシングティームは、マクラーレン・カーズが伝説のロードカーであるF1を生み出すより22年前、マクラーレン・オートモーティブが設立されるより47年前から存在した。
620Rは現代のレーシーなマクラーレンのレシピ通りに造られたクルマで、カーボンファイバー素材のタブシャシーに3.8LのV8ツインターボをミドシップマウントし、DCTを組み合わせている。さらに、走りに本気で取り組む裕福なエンスージアストに向けた、エントリーレベルのサーキットマシンでもある。
マーケットにおけるこの小規模で特化したカテゴリーは、英国のブランドが得意とするところだ。その需要は既存の顧客だけでなく、GT4やGT3といったクラスで闘うレーシングティーム、さらにはF1マニアにも見込める。
マクラーレン的には、現行スポーツシリーズのトリを飾るモデルということになり、2021年初頭にもアナウンスされるであろう後継シリーズはV6プラグインハイブリッドとなるとみられる。それはさておき、620Rというクルマそのものの本質とは、いったいどのようなものなのだろうか。
結論からいえば、これは570S GT4レースカーをそのまま公道バージョンに仕立てたクルマだ。レースモデルの価格は18万ポンド(約2520万円)で、そのほかに欧州でも名のあるサーキットを巡る全6戦のレースに出るエントリーフィーが16万ポンド(約2240万円)少々かかる。
となれば、GT4のホモロゲーションモデルなのかと思うところだが、それは違うだろう。620Rは、レースカーの570S GT4よりだいぶ遅れて登場したからだ。
では、サーキットで磨かれた、エキサイティングで公道でも楽しめるクルマというだけのことなのか。つまり、ポルシェ911 GT3 RSやフェラーリ488ピスタに対する、マクラーレンの回答ということなのだろうか。そもそも、これをほんとうにロードカーだといっていいのだろうか。
メーカーの公式見解を参照するなら、620Rは570S GT4のストリート仕様であり、スリリングな走りのみを追求して造られた、ということになる。もちろん、商業的な理由を別にすれば、だが。
そこで知りたいのは、そのマクラーレンのコメントが結局はどういう意図を含んでいるのかということだ。また、ドライバーズカーとして、すでにセンセーショナルな600LTとの差別化が十分になされているのかという点も気になるところである。