【詳細データテスト】マクラーレン620R レースカー譲りの硬さとうるささ 温度依存性の強いタイヤ それでも手に入れたい

公開 : 2020.12.26 20:25  更新 : 2021.01.06 23:21

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

620Rのベースとなるのは、マクラーレン独自のカーボンファイバー製タブ構造体。720Sや最新のアルティメットシリーズに用いられる、より大型で剛性の高いモノケージではなく、570Sはもちろん、GTにも用いられるシンプルなモノセルIIだ。

現在のマクラーレン製ロードカーすべてがそうであるように、エンジンはV8ツインターボで、ドライバーとリアアクスルの間に搭載される。ただし、ほかのスポーツシリーズとこの最終バージョンの間には、明確な違いが多くある。

大振りな調整式リアウイングをはじめ、フロントスプリッターやバンパー、ボンネットはGT4マシン用のものをベースに、公道用の規定に適合するよう手が加えられている。
大振りな調整式リアウイングをはじめ、フロントスプリッターやバンパー、ボンネットはGT4マシン用のものをベースに、公道用の規定に適合するよう手が加えられている。    OLGUN KORDAL

570S GT4のM838TEこと3.8Lユニットは、競技車両の厳格なレギュレーションによって出力を436psほどに制限されているが、620Rではかつてないほどの高いレベルに引き上げられている。

最高出力は7250rpmで620ps、最大トルクは3500〜6500rpmで63.2kg−mに達する。このパワーアップは、ECUやターボチャージャー制御の再調整によるもの。マクラーレンのエントリーラインであるスポーツシリーズとしては、現行モデル最強だ。

とはいえ、直接的なライバルたちには、これより強力なモデルも少なくない。その相手はミドシップカーに限らず、フロントエンジンモデルでも、リアエンジンモデルでもだ。

トランスミッションは7速DCTで、後輪を駆動。センターロックの鍛造アルミホイールと、専用設計のピレリPゼロ・トロフェオRは、前後異径セッティングだ。

本物のレースカーの走りを味わえるよう、サーキット向けのスリックタイヤもオプション設定されている。ぜひ試してみたかったところで、そのチャンスもあったのだが、オートカーのロードテストでは公道用タイヤを履いて試乗するのがルールなので、今回は見送った。

ブレーキはカーボンセラミックディスクを装備。バキュームポンプとブレーキブースターはセナのテクノロジーを流用し、ストッピングパワーを高めている。

サスペンションはGT4マシンと共通のハードウェアを使用。軽量な手動調整式の2ウェイコイルオーバーダンパーは、伸び側と縮み側で32通りのセッティングが可能だ。

前後のウィッシュボーンは。600LTや720Sと同じパーツで、アップライトともどもアルミ製。スプリングレートとスタビライザーは、570Sや600LTよりかなり硬い。アッパーマウントはステアリングのシャープなレスポンスと優れたフィールを得るべく、ゴム製からステンレス製へ変更された。

大振りな調整式リアウイングをはじめ、フロントスプリッターやバンパー、ボンネットはGT4マシン用のものをベースに、公道用の規定に適合するよう手が加えられている。

フェラーリ488ピスタにみられるようなボンネットの空力エアダクトは、車体上部のエアフローを整流し、前輪直前のカナードと同様にダウンフォースも発生させる。240km/h付近でのダウンフォース量は、185kgに達するという。

テスト車は、2万5000ポンド(約350万円)のRパックを装備。ボディにストライプが入り、パネルの多くがグロス仕上げのカーボン地肌を見せる。さらに、チタンのスーパースポーツエキゾーストと、ルーフ上に突き出たカーボンのエアスクープも装着される。

実測重量は1470kgで、2019年に計測したラグジュアリーパック装備の600LTスパイダーより5kg重かったのは残念だ。

たしかにテスト車には、自分で購入するなら選ばないようなアイテムも据え付けられていた。たとえばバウワース&ウィルキンスのオーディオや、ナビゲーションシステムなどがそれだ。それでも、そうしたもろもろを取り去っても、それほどの軽量化にはならないはずだ。

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