【詳細データテスト】マクラーレン620R レースカー譲りの硬さとうるささ 温度依存性の強いタイヤ それでも手に入れたい
公開 : 2020.12.26 20:25 更新 : 2021.01.06 23:21
内装 ★★★★★★★★☆☆
ドラマティックなディヘドラルドアを跳ね上げ、低いキャビンへ潜り込むプロセスは単純ではない。気分よく快適に乗り込めるクルマとはいい難いのだ。
幅広いサイドシルは高さもあり、それをまたがないと、フットウェルに足を置くことができない。さらにはカーペットが敷かれていないので滑りやすく、余計に乗り込みにくさを感じることになるかもしれない。
そこまではうまくいっても、次は腰を回して、セナと同じカーボンファイバーのフルバケットシートの硬く狭いエッジに尻をつくことになる。それから右脚を室内に引き込み、ようやく座面に滑り込めるのだ。
そのルーティンは、必要以上に繰り返したくなるようなものではない。しかし、いったんコクピットに収まれば、シンプルで目的がこの上なくはっきりした運転環境に喜びを覚えることだろう。
ドライビングポジションは格別だ。マクラーレンらしくリムの細い、アルカンターラ巻きのステアリングホイールは、ドライバーの真正面に据え付けられ、手前に十分引きつけることができる。
インフォテインメントシステムとスターターボタン、パワートレインとシャシーのセッティングスイッチはそこにあってほしいと思う場所に配置されている。アクセスしやすいようにトランスミッショントンネルを高くした、ウォーキングの設計陣の先見性がありがたく思える。
ダッシュボードとスカットルが低いので、前方視界はエクセレント。それに対して後方視界は、巨大なリアウイングに妨げられる。乗降性を厄介なものにするバケットシートも、疲れ知らずに座っていられるサポート性を備え、長距離走行でも驚くほど快適だ。
シートベルトは巻取り式に加え、テスト車は6点ハーネスも装着。それで身体を固定していても跳ね上げ式ドアを閉められるよう、ドアハンドルには鮮やかなレッドのファブリック製ベルトが据え付けられている。
座面が限りなく路面へ近づくよう低められているので、ヘッドルームには余裕がある。われわれの計測では960mmだったが、これはフォルクスワーゲン・ポロに近い数値だ。
よほど背が高くなければ、ヘルメットを被っていても窮屈さを感じずに乗れるだろう。普通、公道走行可能なクローズドコクピットのレースカーではこうはいかない。
センターコンソールには、小さいが深さのあるトレイも用意されている。キーを置いておくのにちょうどいいが、走り出したらエンジンルームからシャシーを伝わってくるバイブレーションや、路面からの突き上げで、置いたものが暴れうるさくてかなわないだろう。
ドアにはネットの小物入れが備わるが、細々したものをこぼさずに収めておけるかは怪しい。音を立てたり落としたりすることなく持ち運びたいものは、バッグに入れてフロントのそこそこ広いトランクスペースへ入れておくのが安心だ。