【限界領域を味わう人へ】ポルシェ911 GT3 RS MRへ試乗 991型 ニュル最速に接近
公開 : 2020.12.26 10:25
催眠術にかかったように運転へ浸る
試乗では、腕利き揃いのサーキット走行会にも加わったのだが、一緒に走るフェラーリやランボルギーニ、911が障害物になるほど速かった。しかし、まだGT3 RS MRの真髄には届いていないだろう。
筆者程度のドライビングスキルでは、限界領域まで到達することは可能ながら、催眠術にかかったように運転へ没入し、穏やかな気持ちになってしまう。不思議なことに。それくらい速すぎる。どんなポルシェ911でも、経験したことがないほど。
手が加えられたサスペンションによって、高速コーナーでの精度は一段と引き上げられ、改善された空力性能でボディは路面へ押さえつけられる。シルバーストーン・サーキットを、飛ぶように走り回れる。
外で見ている人からすると、信じられない速度で911が駆け抜けていく。しかし中で運転しているドライバーは、平穏なまま。
もう作られることのない991型のGT3 RSに、手を加えないでほしいと考える人もいて当然。筆者も、わずかにトゲのあるサーキットでのキャラクターが好きだと、GT3 RSの試乗で書き残している。ドライバーに委ねられ、深い充足感が味わえる。
もし、そんなクルマを今探しているなら、718ケイマンGTSを選ぶといいだろう。費用もだいぶ安く済む。
ハンドリングで、より優れるクルマを運転した経験はある。だがGT3 RS MRは簡単に速く運転できるうえ、強い一体感も得られる。むしろそれ以上に惹き込まれる、脳に直接響くような体験だと感じた。言葉にすることが難しいけれど。
領域でのニュアンスに惹きこまれる
サーキットに合わせて設定されたGT3 RS MRのサスペンションは極めて硬く、一般道では鋭い振動が容赦ない。ダンパーの設定を緩めることで、どこまでフレンドリーな乗り心地になるのか、試してみたいところ。
実際に運転してみるまでは、MRのチューニング・パッケージ価格は高すぎるように思えるかもしれない。しかし、実際には引き出せないような領域の性能に多額のお金を投じたいと考える、スーパーカー・オーナーは少なくない。
911 GT3 RS MRは、派手なドリフトマシンではないし、超高速に充足感を感じたい人のクルマでもない。
限界領域に挑むことを好むドライバーが、その領域でのニュアンスをサーキットで一度味わえば、この911 GT3 RS MRに強く惹きこまれるに違いない。そんな人のための、特別な11台だ。
ポルシェ911 GT3 RS MR(991型/英国仕様)のスペック
価格:6万9000ポンド(931万円/チューニング・パッケージのみ)
全長:4557mm
全幅:1880mm
全高:1297mm
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1430kg
パワートレイン:水平対向6気筒3996cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:520ps/8250rpm
最大トルク:47.8kg-m/6000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック