【最高級の最上級】アウディS8に試乗 A8ではなくS8を選ぶ価値は? 肉体的/精神的にストレス極小

公開 : 2020.12.28 17:45  更新 : 2021.10.11 13:37

重みは手応え 乗り心地も頗る良好

重みを感じさせるフットワークと表現すると「鈍重」と誤解されそうだが、効率良くコーナリングラインをコントロールできる操縦性はそういうもの。

重みは確実に重心をラインに乗せる手応えでもある。

クワトロシステムだけじゃなく先進技術が満載のシャシーがあっての操安性や乗り心地。
クワトロシステムだけじゃなく先進技術が満載のシャシーがあっての操安性や乗り心地。    佐藤正勝

揺らぎや過剰な挙動が皆無といっていいほどなので、高速コーナーでの揺るぎなさだけでなく、タイトなワインディング路も意外と扱いやすい。

しかも、乗り心地が頗る良好。ふんわりゆったりというタイプではなく、揺れ返し等の不要な挙動を抑えているので、どちらかと言えば締まりとか粘りと表される特性。

フラットライドなのに肌触りがいい。

S8にはA8にも採用されている電子制御エアサスをベースにスタビライザー左右に取り付けられた電動モーターにより能動的にロールや車高を制御するプレディクティブアクティブサスペンションを採用。

レーザーセンサーやカメラ情報にサスストロークの補正をおこなうのが特徴。

さらに65km/hを境に低速側では逆位相側、高速側では同位相側で制御される4輪操舵システムも採用される。

クワトロシステムだけじゃなく先進技術が満載のシャシーがあっての前述した操安性や乗り心地なのだ。

もっとも、ポテンシャルの高いデバイスは使い方が重要であり、アウディのフラッグシップサルーンらしくまとめたセンスにも感心させられた。

肉体的にも精神的にもストレス極小

S8の持つ高性能を一言で表すならスーパーツアラー。ピーク値ではなく、平均値の高さを優先した走り。それはドライバーの操縦技量も含めてである。

限界を究めようとすれば相応の難しさもあるが、特別な運転技術や研ぎ澄まされた感覚がなしでも、とてつもない速さにまで達してしまう。ハイアベレージを維持するのがとても楽なモデルである。

価格はA8の60 TFSIの450万円高。A8のほうが快適性寄りとはいえ、頂点クラスのセダンではトップクラスの高性能を誇る。
価格はA8の60 TFSIの450万円高。A8のほうが快適性寄りとはいえ、頂点クラスのセダンではトップクラスの高性能を誇る。    佐藤正勝

もう1つ見逃せないのは、というよりこれもスーパーツアラーとしての資質だが、ハイアベレージを維持しても肉体的にも精神的にもストレスが極めて少ない。

このサイズと価格から受けるストレスはともかく、クルマからアレコレ要求してこない。しかも全速度域で快適安心型なのだ、走行ストレスが溜まるはずもない。

価格はA8の60 TFSIの450万円高。A8のほうが快適性寄りとはいえ、頂点クラスのセダンではトップクラスの高性能を誇る。

S8は謂わば贅の上に贅を重ねたようなもの。投資を回収するのが難しい。一般的にはA8で十分である。

ただ、現時点でアウディとクワトロが理想とする走りを最もよく具現化させたモデルであり、アウディ好きには羨望の一車なのは間違いないだろう。

記事に関わった人々

  • 佐藤正勝

    Masakatsu Sato

    1964年生まれ。1984年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、八重洲PRセンターに入社。86年にF1/ルマン24時間を撮影後何かのスイッチが入ったらしく退社。フリーとなり国内外のレースを撮影。91年に撮影したDTMで、また何かのスイッチが入ったらしくどっぷりドイツ漬けに。現在は撮影のみならず、CS放送でのレース解説や雑誌への執筆も。
  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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