【ナイフvsハンマー】スカイラインGT-RとポンティアックGTO GTを名乗る日米の2台 前編
公開 : 2021.01.16 07:25
6.4Lビッグブロックに強化サスペンション
5.4Lを超える排気量のエンジンは、インターミディエイト・クラスのAボディ・プラットフォームに標準モデルとして搭載できないという、GMの決定をかいくぐった手法だった。オプションなら、許されたわけ。
フルサイズ・モデル用としてポンティアックには、6.4LのビッグブロックV8が手元にあった。しかし強力なエンジンを載せるだけでは不十分だと、デロリアンは考えた。
強固なサスペンションにねじれにくいアンチロールバー、ワイドなタイヤが必要だった。トランスミッションはフロア・マニュアルが適していたし、左右4本出しのデュアル・スプリッターエグゾーストも組み合わされた。
こうして生み出されたのが、ポンティアックGTO。クーペかハードトップ、コンバーティブルのボディが用意された。最高出力は 329psだ。
全長5156mm、全幅1862mmという大きなミドルサイズのGTOは、多くのブランドへ強い影響を与えた。ライバルモデルがポンティアックと同じGM系ブランドからも発売され、競争は激化。1966年からは、単一モデルとしてGTOが売られるようになる。
一時は大成功を収めたGTOだったが、環境負荷と安全性への規制が強化され、徐々にパワーダウン。最終的にはオプション・パッケージの扱いへ戻る。当時は保険料も高く、デロリアンが狙ったユーザー層には手の届かないモデルでもあった。
マッスルカーが去勢されていくアメリカに対し、同時期の日本は自動車産業の成長期。日本経済を牽引するように、自動車輸出が本格化していく。一方で、GT-Rという興味深いモデルが国内市場向けに発売されたのだった。
160psを発揮する2.0L DOHC直列6気筒
GT-RのベースとなったC10型スカイラインは、1968年に3世代目として発売がスタート。もとは日本政府の働きかけで日産と合併したプリンス自動車が製造するモデルの1つで、4ドアサルーンとステーションワゴンがラインナップされていた。
合併後は日産のエンブレムが与えられたものの、グロリアの1つ下のモデルとして、4気筒エンジンと6気筒エンジンが載せられ生産が続いた。その経緯もあって、3代目スカイラインの設計は、プリンス色が強い。
GT-Rでは、基本的なボディシェルを共有しつつ、セミトレーリングアーム式のリア・サスペンションが特徴。最高速度は199km/hにまで引き上げられ、当時150万円という高い価格が付けられた。
多くのC10型スカイラインが、GT-Rを模した改造が施されている。その価格を知れば、納得だ。
日本版BMW CSLと呼びたくなる初代スカイラインGT-Rだが、厳密にいえばホモロゲーション・スペシャルではない。国内のツーリングカー・レースでの活躍をきっかけに誕生した、一般ユーザー向けのモデルと考えた方が正しい。
エキゾチックな魅力満載の2.0L DOHC直列6気筒エンジンは、ミクニ社製キャブレターで160psを発揮。オリジナルはポルシェ906に戦うべく開発されたミドシップのグループ6スポーツカー、R380用に開発されたユニットだった。
エギゾーストマニフォールドとカムシャフトを交換し、ウェーバー社製キャブレターに載せ替えれば、簡単に200psを超えるポテンシャルを備えていた。トランスミッションは5速MTだ。