【ナイフvsハンマー】スカイラインGT-RとポンティアックGTO GTを名乗る日米の2台 後編

公開 : 2021.01.16 18:25  更新 : 2022.08.08 07:34

欧州ブランドが幅を利かせていた高性能グランドツアラー、GTというカテゴリー。そこへ戦いを挑んだ2台が、初代日産スカイラインGT-RとポンティアックGTOです。同じGTを掲げる、対象的な2台を比較試乗しました。

5速MTは過去の体験がないほど滑らかで正確

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ポンティアック・テンペスト・ル・マンGTOのインテリアは、1960年代のGM製モデルで見慣れた雰囲気。ダッシュボードに並ぶメーターには、オプションとしてレブカウンターが付いている。

GTOのビニールレザー製のシートは幅広で滑りやすそうだが、助手席側とは独立している。少なくとも、ベンチシート以上のサポート性はあるだろう。

日産スカイラインGT-R(初代KPGC10/1969〜1972年)
日産スカイラインGT-R(初代KPGC10/1969〜1972年)

さて、まずは白いスカイラインのドアを開く。初代GT-Rのシートに座ってみても、特別な印象はさほど強く感じられない。そのかわり、エンジンサウンドが脳に焼き付く。

耳で聞いている限り、排気量は2.0L以上あるような迫力。回転数を上げるほど、自然吸気の直6らしい洗練されたハーモニーを放ちだす。

フライホイールが軽いことも、キャブレターの弁の動きも、エグゾースト・マニフォールドを流れる排気ガスも、図像として頭に描き出される。不思議な体験だ。

シリンダー毎に4つのバルブを備えたS20型6気筒エンジンは、超が付くほど滑らかで音響が豊か。アクセルレスポンスは極めて鋭く、7500rpmまでストレスなく吹け上がる。だが、4000rpm以下ではパワーもトルクも控えめ。

軽快に走るには、クイックに変速できるクロスレシオの5速MTを操る必要がある。シフトフィールは、過去に体験したことがないほど滑らかで正確だ。

実際の加速感よりサウンドの方が威勢が良いが、ドライビング体験は素晴らしい。シャシーは、エンジンのエネルギーを見事に受け止める。コーナーではフラットでニュートラル。すべての操作系が、同等の労力で動かせるように設計してある。

信頼できるポンティアックの操縦性

低い位置のバケットシートは、ほどなくして正解だと実感できる。踏みごたえが重く、アシストのないブレーキペダルは、シフトダウン時のヒール&トウで安定した視点になる。誤って強く踏んで、ロックさせる心配も少ない。

日産スカイラインGT-Rを運転する喜び。ドライバーの入力に、忠実に反応してくれる振る舞いが、中心にある。

ポンティアック・テンペスト・ル・マンGTO(1964〜1967年)
ポンティアック・テンペスト・ル・マンGTO(1964〜1967年)

すべてがダイレクトなGT-Rに対して、ポンティアックGTOはすべてがアシスト付き。コイルスプリングのリジッドアクスルに、大きなスチール製フレームは、同クラスのGM製モデルと共有。コンパクトで500kg近く軽い、タイトな日産とは真逆だ。

ただし、ふわふわのアメリカンというわけでもない。ステアリングは軽いし、ギア比が低く感触はほぼない。積極的にコーナーを攻め込む、という走りは難しいだろう。でもGTOを数分運転すれば、ステアリングホイールで感じる不安感は薄れていく。

意図したとおりに、大きなボディは向きを変えていく。ボディロールは小さく、安定性は高い。思わずコーナリングに惹き込まれるということはないが、ポンティアックを信頼できるようになる。

サウンドも、日産ほどの特別感はない。しかし巨大なエンジンが余裕たっぷりのトルクを生み出し、涼しい顔のまま道路を高速で突き進める。

マッスルカーらしいV8エンジンの唸り声は小さくない。回転数の変化に合わせて、ボディが揺れるほどトルクも太い。ATでも、アスファルトへブラックマークを残すのも朝飯前。アクセルペダルをフロアめがけて深く踏み込めば良い。

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