【日本の高級車、復活なるか】レクサスLS改良新型 LS500h Fスポーツ 乗り心地/静粛性/アドバンストパークの評価は?

公開 : 2021.01.02 21:45  更新 : 2021.12.27 23:58

レクサスの最上級セダン「LS」がマイチェン。静粛性、乗り心地に手を入れ、ハイブリッド車には最新の駐車支援技術を採用。日本の高級車の“今”を調査してきました。

どんなクルマ?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)

このMCの1つの柱が「原点回帰」。初代レクサスLS(セルシオ)は1989年に誕生。包まれるような静粛性、穏やかさと精度感を融合した乗り心地は、革新的と評するに相応だった。

自説ではあるが、超高速域の巡航も含めて快適性では世界一であり、同時に欧米の価値感に媚びない“日本発の高級車”という印象も受けた。クルマ界の「日本の誇り」だった。

レクサスLS500h Fスポーツ(ホワイトノーヴァガラスフレーク)
レクサスLS500h Fスポーツ(ホワイトノーヴァガラスフレーク)

一方、レクサス・ブランドは「先鋭」や「躍動」をテーマに高性能やファントゥドライブの要素を強めていく。ショーファードリブン需要が少なくなかったせいか、LSはフォーマル寄りのポジションにあったのだが、先代のビッグMCからスポーツ志向を強め、現行型ではGSの上位らしいモデルに一新された。

ハードウェア関連のMC要点は3.5Lツインターボの改良を除けば、ほとんどが静粛性と乗り心地の改善が主眼。また内装には西陣織を用いるなど「和」の美意識を盛り込んでいる。

こういった改良の発想は、初代LSのコンセプトにも似ている。「揺り返し?」と言っては皮肉が過ぎるが、初代LSに感動を受けた者にすれば歓迎すべきMCである。

マイナーチェンジ車 どんな感じ?

前項で「快適性重視」と振ったものの、試乗車はハイブリッドのFスポーツ。

言うまでもなく富士スピードウェイに由来する「F」を掲げたFスポーツはレクサスのダイナミズムを象徴するスポーツグレードであり、快適性最優先のモデルではない。

レクサスLS改良型の新規外装色「銀影ラスター」。鏡のような光沢が目を射る。
レクサスLS改良型の新規外装色「銀影ラスター」。鏡のような光沢が目を射る。

MCの趣旨とは多少異なる路線だが、ファントゥドライブを求めてなお快適性を犠牲にしないのも頂点クラスのセダンでは重要だろう。

パワートレインは、ハイブリッド専用チューニングの3.5LのV6を核に、動力分割機構をスプリット式にステップ変速ミッションを組み合わせたマルチステージ・ハイブリッド。

同系パワートレインはLCにも採用され、トヨタ系ハイブリッドでは最も高性能である。

しかし、その振る舞いはとても紳士的だ。

アクセル踏み増しに対する応答遅れはほとんどなく、ペダルコントロールに過不足なく追従。極端なトルク変化を抑えた過渡特性もあって、コントロールに神経質になる必要もない。

加速/足さばきを検証

エンジンフル稼働の全開加速でも猛々しさは皆無。エンジン回転上昇はあっても滑らか穏やか、排気音も遠くで鳴っているような感じだ。

低中負荷域では電動との二人三脚がさらに優れた静粛性をもたらし、ロードノイズも際立って少ない。迫力不足という言い方も可能だが、涼しい顔で際立つ性能なのもLSらしさである。

レクサスLS500h Fスポーツ(ホワイトノーヴァガラスフレーク)の前席内装。
レクサスLS500h Fスポーツ(ホワイトノーヴァガラスフレーク)の前席内装。

LSは全モデルに電子制御エアサスを採用。2WD仕様は前輪切れ角の微小補正を行うアクティブステアリング統合制御付きVDIMを装着する。

Fスポーツはターボ車ならアクティブ・スタビライザーが装着されるが、ハイブリッド車の基本サス構成は他グレードと共通している。

スポーツモデルならハンドリングの手応えとか切れ味という話になるのだろうが、そういった演出がないのが特徴だ。

車体の重さを感じさせない追従性と挙動が印象的。車重は2.2tを超えるが、初期の反応や動きが素直であり、収束感がとても自然である。

しかも、硬いバネやダンパーで無理矢理抑え込んでいる感じもなし。もちろん、走行モードをスポーツS+にセットすれば引き締まったサス制御となるが、多少切れ味がよくなる程度で基本的な特性に変化はない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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