【小型でも骨太!】プジョーSUV 2008 新型208、DSと異なるレシピ 素材で勝負できるフレンチ・ハイライダー

公開 : 2021.01.05 11:55  更新 : 2021.10.11 13:49

SUVっぽいネガ 見当たらない?

かくして重心は多少上がっても、CMPプラットフォームの剛性感や、プジョーらしい活発さは、新型2008でも失われていない。

むしろトレッドやホイールベースの適切な拡大によって、異なるグッドバランスの1台に仕上がった、そう唸らせる。

日本仕様の208は100psとなるが、SUV 2008の最高出力は130psに。
日本仕様の208は100psとなるが、SUV 2008の最高出力は130psに。    前田恵介

乗り心地は、猫足というには固めだがハッチバックよりストローク量はあるし、パタパタする「ドライさ」ではなく、適度に湿り気あるしなやかさと敏捷さは味わえる。

試乗したアリュールでも130ps仕様の直3 1.2Lターボを積むので、ハッチバックの100ps仕様よりパワフルなはずだが、車重も増している分、大きなアドバンテージにはなっていない。

にも関わらず、SUVらしからぬ小気味よさを支えているのは、パワートレインのクオリティとシャシーの妙としかいいようがない。

ダウンサイジング・ターボのお手本のような、ピュアテックの軽快で力強い回転フィール、そこに滑らかだが繋がりも適度にダイレクトな、アイシン製8速ATのマナーもあって、高速道路でもワインディングでも、臍を噛むようなことはない。

DS 3クロスバックとの棲み分けとは

ただし、同じパリ郊外のポワシー工場で組み立てられるCMPプラットフォームの兄弟車で、価格帯もより高級なDS 3クロスバックとはっきりとした差が感じられる点がある。

それは2008は非アコースティックガラスゆえ、とくに高速道路での静粛性ではDSが優っている。

プジョーSUV 2008の後席内装。同じプラットフォームを使う上級モデル、DS 3クロスバックと異なる室内環境を分析してみよう。
プジョーSUV 2008の後席内装。同じプラットフォームを使う上級モデル、DS 3クロスバックと異なる室内環境を分析してみよう。    前田恵介

おそらく遮音材の使い方も異なっているだろうし、スポーツ・モードでエグゾーストノートの侵入音も2008の方が大きいと感じる。そこは、価格帯とキャラクターの違いなのだ。

加えて高速巡航時、ADASの作動ぶりが安定していて、Bセグの1台としては長距離行が楽で心地よいのは、特筆事項だ。

たしかに前走車をセンサーが「食った」時の減速制御が強い感じはあるが、レベル2ゆえ警告も兼ねていると思えば納得いく。そもそも、そうした場面で軽くアクセルを踏んでドライバー操作に移行することで、減速Gを相殺するような自然なオーバーライドが秀逸でさえある。

スモールSUVにして、かくも良質のドライバーズカーであり続けている点が、プジョーらしさだ。

トッピングに頼らぬスモールSUV

しかもエントリーグレードのアリュールでも、上級グレードのGTラインと比べて、日常走行に関わる標準装備から省かれているのは、駐車時などの死角を減らす「アクティブ・ブラインドスポットモニター・システム」や、氷雪路や砂泥の路面で駆動力を最適化する「アドバンスト・グリップコントロール」、あとはフォグやインテリジェント・ハイビームぐらい。

内装の質感の高さの割に、輸入車のSUVで300万円を何とか切っている。

プジョーSUV 2008アリュール(アルタンス・グレー)
プジョーSUV 2008アリュール(アルタンス・グレー)    前田恵介

「素にして上質」というフレンチ・スモールの古典的系譜、その今ドキの発現と思えば、納得いく1台ではないだろうか。

新型SUV 2008 スペック

プジョーSUV 2008アリュール スペック

価格:299万円
全長:4305mm
全幅:1770mm
全高:1550mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:17.1km/L(WLTCモード)
CO2排出量:-g/km
車両重量:1270kg
パワートレイン:1199cc直列3気筒ターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:130ps/5500rpm
最大トルク:23.5kg-m/1750rpm
ギアボックス:8速オートマティック
乗車定員:5名

SUV 2008アリュールのトランク。ハッチバックの208と見比べて検討する来店者も多いという。
SUV 2008アリュールのトランク。ハッチバックの208と見比べて検討する来店者も多いという。    前田恵介

記事に関わった人々

  • 前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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