【63より、ベンツより】メルセデスAMG 43の「GLCクーペ」 1000万円級SUVに求めるものは?

公開 : 2021.01.06 20:25  更新 : 2021.12.27 23:47

ベンツSUVのベストセラー「GLC」。様々なバリエーションの中から、AMGの「GLC 43 4マティック・クーペ」に注目。見た目重視と思ったのですが、実際は異なりました。

どんなクルマ?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)

Cクラスをベースに開発されたSUVで、AMGバリエーションのクーペ・モデル。車名のとおりのモデルである。

GLCクラスは、MB車のSUVラインナップではGLBクラスの上位に位置するが、全長/ホイールベースは多少の差であり、車体サイズなら同格に分類できる。

メルセデスAMG GLC 43 4マティック・クーペ(イリジウムシルバー)
メルセデスAMG GLC 43 4マティック・クーペ(イリジウムシルバー)    前田恵介

しかし、キャビンスペースはGLBクラスが一回り大きく、3列シートの採用を可能としている。

言い方を換えるならGLCクラスは実用性を売り物にするモデルではなく、FRのMB車のエントリーに位置するCクラスの“走りの継承”を訴求点とするSUVなのだ。

そのクーペ仕様なら、キャビン実用性はさらに低下して当然。

2名乗車基準の用途向けと勘違いされそうだが、カタログスペックでのヘッドルーム減は35mm。

天井の圧迫感は強くなるが、男性にも十分なスペースがある。

こう見えて使えるパッケージ

レッグルーム寸法は共通。視覚的な閉塞感は多少強いものの、4名乗車常用でも不足ない居住性。

外観の雰囲気で選ぶタイプのモデルにしては、実用性も良好である。

AMG GLC 43 4マティック・クーペの後席内装。試乗車はレザーエクスクルーシブパッケージを装着。
AMG GLC 43 4マティック・クーペの後席内装。試乗車はレザーエクスクルーシブパッケージを装着。    前田恵介

こういった実用性とスポーティな味わいを両立したGLCクーペの特徴は、AMGになっても変わらない。

むしろ走りにおける実用性(質)とスポーティ(絶対性能)の両立という点では、GLCクーペのコンセプトに最も忠実なモデルと言えよう。

AMG 43には3LのV6ツインターボが搭載される。

V8ツインターボのAMG 63には及ばないまでも、390ps/53.0kg-mのパワースペックは同車格SUVではトップレベルだ。

ただ、「あり余るパワー」とか「強烈な加速」と表するようなじゃじゃ馬感は皆無である。

最高出力の発生回転数は6100rpmだが、最大トルクは2500-5000rpm。3000rpmからのマニュアル変速全開加速では、体感的には加速度の変化はあまり感じられず、ほぼフラットに6000rpmに至る。

回転上昇とともに盛り上がる昂揚感のある加速感を求める向きには物足りないかもしれないが、回す心地よさがありながら高回転域でも荒ぶらないエンジンフィールもあって、極めて紳士的だ。

意外にもジェントル?

もっとも、コンフォートモード/Dレンジで走らせていれば、エンジン回転数は常に低く抑えられている。

巡航回転数は80km/hでも1200rpm程度。巡航ギア維持能力も高く、9速ATを利した1段ダウンシフトを巧みに用いて加速への移行も滑らか。

AMG GLC 43 4マティック・クーペの前席内装。現行型は改良により、MBUXを採用している。
AMG GLC 43 4マティック・クーペの前席内装。現行型は改良により、MBUXを採用している。    前田恵介

微妙なペダルコントロールへの追従性も良好。悠々としたドライブフィールが、ツーリング時のプレミアム感を高めてくれる。

駐車場や坂道発進などの細かな使い勝手もよく、苦手とする状況もない。際立つパワースペックながら常に上品に振る舞うのがとても印象的である。

素晴らしいとか見事と表すれば嘘臭くも聞こえるが、乗ってみればそれが決して誇大な表現でないことが理解できるはず。一般論としてハンドリングに求められる要件がすべて高水準でまとまっていた。

一昔の高性能オンロード志向のSUVなら、高い重心を硬いサスで抑え込むのが一般的。コーナリング時の横方向の負荷変動が大きくなり、横G変化も忙しく操縦性も神経質になりやすい。

AMG GLCは違っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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