【誕生から60年】ジャガーEタイプ シリーズ1とシリーズ3を比較 3.8L直6x5.3L V12 前編
公開 : 2021.01.23 07:25
シリーズを重ね純粋さが薄まったボディ
販売の軸となっていた北米市場では、より広い車内と高い実用性が求められた。そこで1966年に登場したのが2+2のクーペ。
1960年代の終わりには、長年登用してきたXKユニットと呼ばれる直列6気筒エンジンは、力不足が否めなくなっていた。その解決策として登場したのが、5.3LのV型12気筒エンジン。その後のジャガーにとっても、伝説的なユニットの1つだ。
ジャガーがル・マン参戦を目指して開発した、XJ13スポーツ・プロトタイプに搭載された4カム・ユニットの流れを汲み、最高出力は275psを達成。活力を取り戻し、シリーズ3としてEタイプの復調に貢献している。
シリーズを重ねる中で、スタイリングは変化していた。評論家たちは、初期のEタイプが備える躍動感が失われたと悲しんだ。確かに、Eタイプの純粋さは徐々に薄まっていった。
シリーズ2へ進化する段階でプロポーションは見直され、構成し直されている。初期の特徴ともいえるパースペクス製のヘッドライトカバーは、シリーズ2が登場する頃には省かれていた。
V型12気筒を搭載する2+2のロードスターは、ホイールベースが200mmほど長い。フェンダーラインは、幅の広いタイヤを収める目的で広げられている。
シリーズ3の発表は、1971年のニューヨーク自動車ショー。北米はジャガーにとって最大の輸出市場であり妥当な会場だったが、アメリカの基準に適合させた5マイル・バンパーと後付けのウインカーは、Eタイプの容姿を乱していた。
息を呑むほどゴージャスなスタイリング
10年以上続けられたEタイプの生産だったが、1966年以降、ブリティッシュ・レイランド傘下となったジャガーの製造品質は及第点レベル。信頼性は低下し、暑い地域を走らせればオーバーヒートはいつものことになっていた。
レーシングドライバーのジョー・ハフェーカーとボブ・トゥッリウスは、Eタイプを駆りサーキットで活躍するも、充分な追い風にはならなかった。1970年代初頭にはオイルショックが襲い、英国でのジャガーの売り上げは瀕死の状態にまで落ち込んだ。
それもこれも、昔の話。2021年に見るジャガーEタイプは違う。シリーズやエンジンの違いはあれど、どれもが素晴らしい。すべて平等だと思う。今回取り上げる初期のクルマと最後のクルマが並ぶと、Eタイプの変化をひと目で見れて面白い。
今回ご登場願った、パールエフェクトの効いたダークブルーに濃赤のレザーが組み合わされた3.8Lのシリーズ1は、魅惑的に美しい。41番目に製造された右ハンドルのロードスターで、ベッドフォード公爵が以前載っていたEタイプだという。
観察していくと、プロポーションで気になる部分もなくはない。フロントガラスは直立しすぎていて、フロントのトレッドも狭すぎる。だとしても、息を呑むほどゴージャスだ。
一方、シリーズ3のV型12気筒のロードスターは、どうしてもシリーズ1の影になってしまう。1974年にEタイプの生産終了を迎えるに当たり、50台限定で作られたコメモラティブ・エディションの1台であっても。