【軽の電動化、本当に受入れられる?】遅くとも2030年代半ば義務化が確定 メーカー/消費者どう対応
公開 : 2021.01.12 05:45 更新 : 2021.01.28 14:45
過熱するESG投資
鈴木社長は続けて「今後はトヨタからハイブリッド技術(ノウハウと部品)を共用し、スズキ独自のストロング・ハイブリッド車を開発する可能性もある。将来的にはEVになるのだと思うが、昨今の(世界の)動きは速すぎる印象がある」と答えた。
一部では、ダイハツがトヨタと協業して軽自動車にストロング・ハイブリッド導入と報道もある。
EVについては、スズキの主力市場であるインドで、トヨタとの技術提携を発表しており、2020年1月には現地モーターショーで、小型SUV型EVのコンセプトモデル「フトゥーロe」を公開している。インドでのEV拡販が進めば量産効果で、将来的には日本でのスズキ軽EV登場の可能性もある。
ただし、鈴木社長が「世界の動きが速過ぎる」と指摘するような、ESG投資などによる投資マネー先行型での自動車電動化で、果たして軽のEV化が日本社会に受入れられるかどうかは、まだ疑問が多い。
技術的な見解では、電動化は駆動用バッテリーの大きさに比例して、ハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車、EVという順で普及することが予想されてきた。
また、軽自動車は本来、小排気量で燃費が良く、スズキ車のようなハイブリッド化されていなくても、世界標準で見ればCO2排出量が少ない「エコカー」である。
こうした状況で進む、軽の電動化。ディーラーやユーザーはこれをどう見るか?
事業転換といっても……
ディーラーの立場で気になるのは新車価格の上昇だ。
近年、Nボックスの登場もあり、トールハイト系ワゴンの上級化やカスタム化などで、ユーザーの支払価格が200万円超えする軽も珍しくなくなった。
とはいえ、軽自動車の売れ筋は100万円台前半から中盤だ。地方都市を中心として軽自動車は「庶民の足」であり、そこに電動化で数十万円とまでいかず数万円でも新車価格が上がることは、ディーラーにとって収益が増えるというよりも、売りづらくなる要因になるように思える。
グリーン成長戦略では「ディーラーの電動化対応・事業転換支援検討」との記載があるが、軽自動車の販売は大手だけでなく、地域の整備工場が協力店となっているケースも多く、一気の事業転換は難しい。
その整備の面でも、電動化の高度化は、クルマの不調箇所を見出すための時間がかかるなど、見えない部分で整備コストが上がる要因だと指摘する声がディーラーを含めた整備業界から聞こえてくる。
また、商用軽EVについては、東京電力などが中心となり2020年5月に設立した「電動車活用推進コンソーシアム」が自動車メーカーと協議をしているが、現時点で各メーカーによる新規商用軽EVの量産化は明確になっていない。
国が旗振りを始めた、軽の電動化。社会における需要性について、きめの細かい配慮が必要だと感じる。