【高齢タクシードライバー事故で現実味】運転中に意識失う「デッドマン」事故、防げる? 企業の取り組み

公開 : 2021.01.08 05:45

スバル「アイサイトX」で実体験した

では、デッドマン装置として実用化されている2つのケースを紹介する。

どちらについても、筆者はメーカー関係者同席のもと、テストコース内で実車での体験している。

スバル「ドライバー異常時対応システム」。車外に対する注意喚起としてクラクションが連続して鳴るようになり、速度は30km/hまで低下。この状態でカーブを走り切り、直線路になってから自動で完全停止。
スバル「ドライバー異常時対応システム」。車外に対する注意喚起としてクラクションが連続して鳴るようになり、速度は30km/hまで低下。この状態でカーブを走り切り、直線路になってから自動で完全停止。    スバル

まずは、スバルのアイサイトXだ。

2020年10月に発売された、新型レヴォーグから搭載された、次世代アイサイトのオプション機能の総称だ。

その中に、スバルでは「ドライバー異常時対応システム」と呼ぶデッドマン装置がある。

運転席の筆者に、助手席のアイサイト開発統括者が、大きな左カーブを45km/hで走行しながら故意に顔を運転席窓側に大きく振り、前方を見ない状態で走行するように指示した。

これで、デッドマン状態を再現していることになる。

しばらくすると、ピピピという小さな警報音が車内に流れ、なにも対応しない状態でいるとポン、ポン、ポンという大きな警報音に変わると同時に、車外に対する注意喚起としてクラクションが連続して鳴るようになり、速度は30km/hまで低下した。

この状態でカーブを走り切り、直線路になってから自動で完全停止した。

アイサイトXのシステムは、高速道路走行中に高精度地図とGPSによる位置情報を管理している。

デッドマン装置としての完成度はかなり高いと感じた。

もう1つの例は、日野だ。

日野の大型観光バスには「EDSS」

2018年に発売された、大型観光バス「セレガ」に、EDSS(ドライバー異常時対応システム)が搭載された。

EDSSを作動されるには、
・ドライバー自らが体調不良を感じて緊急停止ボタンを押す
・乗客がドライバーの様子がおかしいと判断して緊急停止ボタンを押す
・蛇行が多い
など走行状態の異常をシステムが感知、という3つケースに対応する。

日野の大型観光バス「セレガ」に搭載されたEDSS(ドライバー異常時対応システム)。異常検知から停止までのイメージ。
日野の大型観光バス「セレガ」に搭載されたEDSS(ドライバー異常時対応システム)。異常検知から停止までのイメージ。    日野

実際に体験すると、クラクションが鳴り、ブレーキランプとハザードライトが付き、急停車というよりは、ゆっくりと同一車線で減速して停止した。

車外への通知 スマホの警報など有益

こうしたスバルと日野のシステムなどが今後、タクシーにも応用されることを期待したい。

くわえて、将来的に期待されるデッドマン装置として、車外への通知として、歩行者が持つ、または周囲を走行するクルマの中にあるスマホに緊急地震速報のような警報が鳴り、周囲の異変に対して身構える対策も考えられる。

さらには、タクシーの中央管制センターから遠隔操作による停止や操舵も考慮されるだろう。

遠隔操作については、国の自動運転実証試験として事例がある。その中で、東急が主体となる静岡県伊豆高原駅での実証を2020年末に取材したが、実用化に向けた質の高い内容との印象を受けた。

デッドマン装置の、さらなる高度化と量産化により、悲惨な交通事故が少しでも減ることを祈りたい。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事