【モダン2+2フェラーリの幕開け】フェラーリ612スカリエッティ V型12気筒のFR 前編
公開 : 2021.01.24 07:25 更新 : 2021.08.05 08:07
オールアルミで軽量・強固なボディ
長いノーズとドア、短いリアデッキを備えるボディはアルミニウム製。360モデナに次ぐ、2番目のオールアルミ・ボディのフェラーリだった。
V型12気筒の最高出力は540psで、全長4897mmのクーペを静止状態から97km/hまで4秒で加速。最高速度320km/hを実現している。
フロント・ミドのレウアウトを実現するアーキテクチャは新設計で、大きなV型12気筒エンジンをフロントアクスルより後方へ搭載。ミグ溶接とスポット溶接で組まれるアルミ製のスペースフレームは、剛性も極めて高い。
結果、612スカリエッティは従来のフェラーリと比較して、大幅に軽く頑丈だった。重量と剛性との比率でいえば、60%も向上していたという。
知的に統合されたスタビリティとトラクションの制御システムも、フェラーリ初採用。サスペンションは、従来的なボールジョイントのアルミ製ダブルウイッシュボーン。ダンパーの減衰力は、ホイールセンサーからの情報をもとに連続的に可変制御される。
サスペンションのほか、エンジンやトランスミッション、ブレーキもネットワーク化。伝統的なメカニズムと最新のテクノロジーとの、素晴らしい融合といえるだろう。
612スカリエッティを今探せば、6速マニュアルにも幸運なら巡り会えるかもしれない。199台が作られている。残りは7000ポンドの標準オプション状態だった、パドルシフトのF1マチック、6速セミATが搭載されている。
OTOプログラムで612をコーディネート
トランスミッションの種類に関係なく、レイアウトはトランスアクスル。車重1840kgの前後重量配分を最適化させている。新車当時の価格は17万7000ポンドと高額だったが、すぐに1年半のバックオーダーを抱える人気だった。
フェラーリは2006年以降、612のスペシャル・エディションを3台展開。その中で最も注目に値するのが、セッサンタ。フェラーリ創立60周年を祝う記念モデルで、60台が限定で作られた。その多くが、2トーンの塗装で仕上げられている。
2008年からは、ワン・トゥ・ワン(OTO)と呼ばれる特別プログラムを介して注文を受けるようになる。ボディ色やインテリア素材、オプションなどを個別に選択し、612をパーソナライズすることが可能となった。
今回ご登場願ったスティーブ・カニンガムがオーナーの612スカリエッティも、OTOプログラムでコーディネートされた1台。2009年の登録で、黒のボディにスイッチで透明度を変えられるクラマティク・グラスルーフを備える。
3オーナー目で、ディーラーでの整備記録を受け継いでいる。パドルシフトのプログラムは、改良版がインストールされているという。「10年ほど前に、最初の612を買いました」。とカニンガムが振り返る。
「アストン マーティン・ヴァンキッシュを所有していましたが、成長する子供のために、リアシートの大きなモデルが必要だったんです」。最初の612も素晴らしいクルマだったというが、ボディは再塗装が必要になっていた。