【マイナーチェンジで十分?】フルモデルチェンジが長期化する明と暗 10年以上「現行型」のモデルも存在
公開 : 2021.01.19 05:45 更新 : 2021.10.22 10:13
大幅な進化にはフルモデルチェンジが必要
フルモデルチェンジには多額の開発費用が必要だが、マイナーチェンジなら節約も可能になる。そして前述のとおりマイナーチェンジの可能性も広がった結果、フルモデルチェンジの頻度が下がった。
ただし、フルモデルチェンジでないと対応できないこともある。例えば後席の居住空間や荷室容量を広げるには、ボディを造り変える必要があり、フルモデルチェンジが不可欠だ。
三菱エクリプス・クロスは2020年のマイナーチェンジで、PHEVを搭載する目的でボディの後部を105mm伸ばした。この変更で荷室長は少し拡大したが居住性に変化はない。環境/燃費性能を向上させるため、車両重量を軽量化する時も、フルモデルチェンジが必要だ。
新型エンジンの搭載はマイナーチェンジで対応することもあるが、プラットフォームも併せて新開発すれば、動力性能、走行安定性、乗り心地、環境/燃費性能を大幅に高められる。
既存のプラットフォームに合わせて新型エンジンを開発したり、既存のエンジン搭載を考えて新型プラットフォームを造る必要がないからだ。エンジン、補機類、駆動システム、プラットフォーム、足まわりなどを協調させながら理想的に開発できるため、妥協のない優れた効果が得られる。
この開発ではフルモデルチェンジは必須で、複数の機能を同時に開発するから投資リスクも高い。困難を伴うが、マツダは一連のスカイアクティブ技術と魂動デザインをほぼ同時に開発して機能を幅広く向上させた。
衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能を進化させる時の対応は、車種やタイプで異なる。レクサスISやマツダ6などは、マイナーチェンジでも相応に進化させた。ホンダのNワゴンやNボックスは、先代型のマイナーチェンジでは対応できず、現行にフルモデルチェンジしてホンダ・センシングを採用した。
「どこが変わったのか」の見極めが大切
ユーザーから見て、商品力が十分に高まればマイナーチェンジでも構わない。
例えばレクサスISは、マイナーチェンジでも走行安定性と乗り心地を大幅に向上させた。後席は相変わらず閉鎖感が伴うが、レクサスISはスポーツ指向のセダンだから大きな欠点にはならない。燃費の悪いV型6気筒の3.5Lエンジンなど、マイナーチェンジによる進化の停滞も散見されるが、直列4気筒の2.5Lハイブリッドを使う分には不満は生じない。
日産エルグランドはマイナーチェンジで安全装備を向上させたものの、プロパイロットは採用されず、運転支援機能は設計の古いタイプだ。eパワーを含めてハイブリッドもない。Lサイズミニバンにとって大切な3列目シートと荷室も相変わらず狭い。従ってエルグランドは、フルモデルチェンジを実施する必要があった。
メーカーはフルモデルチェンジでもマイナーチェンジでも、フロントマスクを変えると「新型」と宣伝する。「どこが変わったのか」を見極めることが大切だ。
この時には新旧比較だけでなく、機能をライバル車と比べると分かりやすい。とくに衝突被害軽減ブレーキと運転支援機能は、進化の著しい分野だから、設計の新旧も明確に表現される。「進化度」のバロメーターになるので活用したい。