【どのハイブリッドが生き残る?】トヨタ方式/日産&ホンダ方式を比較 マイルドハイブリッドにも注目

公開 : 2021.01.20 05:45  更新 : 2021.10.22 10:13

日産ホンダ方式は、運転感覚が新鮮で価格も割安に

設計の新しいコンパクトカーの場合、燃費効率で選ぶならTHSIIといえそうだが、eパワーやe:HEVにもメリットがある。電気自動車と同じく、モーター駆動の特徴を実感させる運転感覚だ。

モーターは瞬発力が強く、巡航中にアクセルペダルを踏み増したときなど、速度を素早く上昇させる。アクセル操作に対して、機敏に反応する運転感覚が持ち味だ。とくにeパワーは、アクセル操作で速度を幅広く調節することも可能にした。減速時にモーターが発電をおこない、バッテリーに充電する回生時の減速力を有効活用している。

ホンダ・フィット(e:HEV)
ホンダ・フィット(e:HEV)

ただし、アクセルペダルによる速度の幅広い調節機能は、ドライバーによっては使いにくい場合もある。アクセルペダルをラフに戻すと、強い減速力が発生するからだ。必ずしもメリットになるとは限らないが、モーター駆動の「ハイブリッドらしい」運転感覚として、注目度や話題性は高い。

価格については、以前はモーター駆動のタイプが高めだったが、今はTHSIIと大差ない。ヤリスやヤリス・クロスのTHSIIは、装備の違いを補正すると、1.5Lのノーマルエンジンに比べて35~37万円高い。フィットのe:HEVも同程度の価格上昇に抑えた。

e:HEVは高速道路などでエンジンがホイールを直接駆動する機能も備わるので、複雑かつ高コストになると考えられるが、価格には反映させていない。燃費の優れたコンパクトなハイブリッドでは、ユーザーは出費を抑えることも重視するから、車両価格が高いと競争に負けてしまう。フィットのe:HEVもノーマルエンジンとの価格差をヤリスのTHSIIと同等に設定した。

燃費を重視するならTHSII、運転感覚の面で、従来のエンジン車とは違うモーター駆動の新しさを求めるならeパワーやe:HEVといえそうだ。それぞれに特徴がありニーズに応じて選択できる。

低価格のマイルドハイブリッドにも注目

関心を集めて話題になることの多いハイブリッドは、THSII、eパワー、e:HEVだが、ほかにも複数のタイプがある。

軽自動車を含めた低価格車で注目されるのは、スズキが積極的に搭載するマイルドハイブリッドだ。モーター機能付き発電機が、減速時を中心とした発電、エンジン駆動の支援、アイドリングストップ後の再始動をおこなう。

スズキ・ソリオ・バンディット・ハイブリッド
スズキ・ソリオ・バンディット・ハイブリッド

マイルドハイブリッドでは、モーターの出力や燃費の向上率は低いが、価格の上乗せも少ない。アイドリングストップ後の再始動はベルトを介して行うため、一般的なセルモーター方式に比べてノイズが小さい。エンジン停止と再始動を頻繁に繰り返しても煩わしく感じない。

スズキ・スイフトRS同士でマイルドハイブリッドとノーマルエンジン(アイドリングストップは非装着)のWLTCモード燃費を比べると、ハイブリッドRSが21km/L、ノーマルエンジンのRSは20km/Lだ。価格はハイブリッドRSが9万3500円高い。

実用燃費をWLTCモード燃費、レギュラーガソリン価格を140円/Lで計算すると、車両価格差を燃料代の節約で取り戻すには30万km以上の走行を要する。つまり、マイルドハイブリッドを選んでも、出費の面でトクをすることはほとんどない。

しかし、低価格車で二酸化炭素の排出量をなるべく抑えたい、あるいは信号待ちのときなどにアイドリングを控えたいユーザーには、共感できるシステムになる。

本来、ハイブリッドなどの環境技術は、出費を抑えることよりも二酸化炭素の排出量や化石燃料の消費量を抑えることが目的だ。その意味では先進的なTHSII、eパワー、e:HEVだけでなく、マイルドハイブリッドによる地道な環境性能の向上にも注目したい。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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