【再評価】トヨタMR2(AW11)に試乗 後編 小さくて軽くて鋭い
公開 : 2021.01.26 17:05 更新 : 2021.10.09 22:31
ミドシップ・レイアウト。電動化、自動運転がトレンドのこの時代に、トヨタの「異端児」MR2(AW11)に試乗しました。トヨタの歴史の1ページを再評価します。
30歳越え、それでも新鮮なスタイリング
1980年代のクルマといえば今日では立派なクラシックカーといえるだろう。
実車と対面する前に中古車のサイトでAW11こと初代MR2の売り物を探してみると25台ほどあった。これを多いとみるか少ないとみるか………
何らかのモディファイを受けていることが多いのはクルマの性格を考えれば当然といえる。実用車として使い倒され廃車になってしまう一般的なセダンに比べれば、改造されマイレッジが進んでもなお大事にされてきた個体が多いのではないかと思う。
白いボディの下半分がシルバーで塗られ、リアスポイラーはなし。今回の取材車であるMさんは1988年式の自然吸気モデルを、2年落ちの状態で入手して今日に至っている。
もちろんオリジナルの塗装なので、近づいてみると32歳という車齢がそこここに感じられる。とはいえオドメーターに刻まれた16万キロという数字を見た後では、なるほどこの個体の程度は極上なのだと確信できた。
4mに満たない全長のボディはとにかく小さくてスタイリッシュ。ミドシップであることを強調するかのようにフロントのボンネットは低くて短い。右リアタイヤの直前に大型のエアインテークが備わっている点からは直列エンジンの存在が強く漂う。
キーを捻ると、背中で力強い鼓動が鳴り響いた。
すぐにわかった、ミドシップの真価
走りはじめると、思っていたよりも「テンロク」のエンジンがパワフルで驚かされた。
スーパーチャージャーで軽く過給しているような、そんな印象である。130psという最高出力は当時の1.6L自然吸気エンジンとしては頑張っている方だが、それよりも1t前後の車重が「パワフル感」に効いているようだ。
現代のクルマよりAピラーがはるかに細く、操舵系とスペアタイヤを収納しているだけのボンネットも低いので視界がとてもいい。実速度よりもはるかに速く感じられるのだ。
ミドシップの真価はやはりハンドリングにあった。公道レベルの速度なら荷重移動に神経質にならなくてもフロントタイヤに充分な接地感があり、切った瞬間にスパッと鼻先が切れ込んでいく。
プロ御用達と言われるほど曲がるミドシップ車の代表であるランチア・ストラトスの2180mmほどではないが、2320mmというAW11のホイールベースも十分に短く、小さな舵角でグイグイと曲がる。
かつてAW11はジムカーナの世界でかなり重宝されていたが、なるほどこれだけの軽い身のこなしと駒のようにクルクルと回れそうな旋回性能があれば、時代を越えてライバルを倒すことができたはず。このドライバビリティは現代のモデルにはないと言い切れる。