【フェラーリ・ローマへ英国試乗】ライバルはベントレーかつマクラーレン 新たな戦いの始まり 前編

公開 : 2021.01.15 10:25  更新 : 2021.08.05 08:08

マラネロ製V8エンジンで後輪を駆動する、2+2クーペのフェラーリ・ローマ。スポーツカーと呼ぶべきか、グランドツアラーと呼ぶべきか。極めて高次元の完成度を備えた最新モデルを、英国編集部が冬の一般道で評価しました。

ローマと英国の一般道で出会う

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
フェラーリの新モデル発表会。客観的にクルマを捉えなければならないが、これが少々難題だったりする。

通常の会場はイタリア北部。素晴らしいおもてなしがあり、一般道のコースは工場周辺。路面は不思議と毎回ドライで、伝説のテストコース、フィオラノも走れる。

フェラーリ・ローマ(英国仕様)
フェラーリ・ローマ(英国仕様)

それではもの足りないと感じる記者のために、モンタナと呼ばれるレストランでディナーも味わえる。その美味しいパスタだけでも、飛行機に乗る理由になり得るほど。こんな発表会で試乗する新しいモデルを、許容できないクルマだと感じ取ることは難しい。

しかし、今回は別条件。8月の陽気なイタリアで予定されていたイベントは、日程が合わず参加できなかった。結果として2020年にローマへ対面したのは、寒い12月のイングランド南部になった。

道路は空いていることの方が珍しい。それと同じくらい、晴れることも珍しい。昼食は、プレートの上のイタリアンではなく、袋に詰めたサンドイッチだ。

でも筆者はまったく悲しく感じなかった。見知らぬ数百人の人とともに、飛行機に乗って数時間を過ごす必要はない。むしろ現実的な英国の地で、真新しいフェラーリを試乗するという事実には、かなりの説得力がある。

英国の一般道でフェラーリ・ローマが良く走るのなら、どんな道でもうまく走れるはず。フェラーリにとってはアウェイといえる国。この地で強さを示せれば、実力の高さが導き出される。

5速でもウェットならホイールスピン

今回運転したのはグッドウッド周辺で、初めはサーキットから。良く走ったが、600馬力以上ある後輪駆動車だから、濡れた路面での運転は忙しなくて当然。

英国随一のスピードとスリリングさを兼ね備えるサーキットをウェットで走るなら、忘れないでおきたい知恵がある。電子制御のセーフティー・システムは、切らない方が良い。

フェラーリ・ローマ(英国仕様)
フェラーリ・ローマ(英国仕様)

近年のフェラーリが用意するトラクション・コントロールやスタビリティ・コントロールは、一二を争うほどに優れている。マネッティーノ・コントローラーを、ウェットかコンフォート・モードにしてみて、その優秀さがよく分かった。

とてもクリーンに、控えめな速度でサーキットを周回するローマ。電子システムがスリップ量を検知し、手に負えなくなる前にクルマをなだめてくれる。

スポーツ・モードを選んでも、あまり満足感は得られない。多少のテールスライドは許すものの、必要以上は許容してくれない。我慢できずにレース・モードに入れると、途端に慌ただしい操作が必要になる。

初めは、自らのスキルでコース上に留めておけると感じた。だがグッドウッドはエスケープ・ゾーンが狭い。濡れた草地はかなり滑る。コースオフすると、すぐ先には事故が待っている。攻めた走りはしないことにした。

フェラーリ・ローマは、5速でも路面が濡れていればホイールスピンしてしまう。うっかりすると、人口を減らすことにもなりかねない。サーキット走行はほどほどにして、公道へ出た。

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