【フェラーリ・ローマへ英国試乗】ライバルはベントレーかつマクラーレン 新たな戦いの始まり 後編
公開 : 2021.01.15 16:25 更新 : 2021.08.05 08:07
マラネロ製V8エンジンで後輪を駆動する、2+2クーペのフェラーリ・ローマ。スポーツカーと呼ぶべきか、グランドツアラーと呼ぶべきか。極めて高次元の完成度を備えた最新モデルを、英国編集部が冬の一般道で評価しました。
ドライバー・フレンドリーな運転環境
フェラーリ・ローマには、実用的なリアシートが付いてくる。2+2のスポーツカーを、これまでフェラーリが作らなかったわけではない。過去に1度だけ、ベルトーネ・デザインの308 GT4が1974年に発売された。それ以来、久しく作られていない。
モンディアルはずっと柔らかいクルマで、カタチもずんぐり。それ以降の2+2は、456から612スカリエッティ、FF、GTC4ルッソまで、V型12気筒を搭載したビッグ・クーペのグランドツアラーだった。ひと回り小さいローマは、新しい一手となるだろうか。
運転環境は、かなりドライバー・フレンドリー。メーターパネル周りは、ハイブリッド・スーパーカーのSF90ストラダーレと共通だと思われる。むしろ、ローマの方がしっくり来るように見える。
写真をご覧いただきたい。とても見事な仕上がりで、フェラーリらしさもちゃんとある。
F8トリブートのメーターパネルは、かなりシンプルなデザインだ。裏に隠れる構造は、458イタリアを起源とする。その理由で、操作はやや複雑に感じた。だが、ローマはその真逆といっていい。
モニターの表示は少し複雑に思えるものの、極めて高精細。操作はとても直感的に行なえ、わかりやすい。この流れでタッチモニターの反応がアイパッドのように正確になれば、エキゾチック・モデルとしては新しい次元に届いたと思えるだろう。
技術者から説明を聞いたが、試乗車のタッチモニターの反応はまだ不十分な様子。フェラーリは、改良を重ねているという。
喜びと驚きで満たしてくれるローマ
12月のイングランド南部は、暗く霧雨が降っていたが、フェラーリ・ローマでゆったり道を流すだけで、とても豊かな気持ちになれる。流麗なスタイリングと穏やかな振る舞い、伝統あるブランドだというすべてが、人生を豊かにしてくれる。
しかし、それだけではミスリード。ローマはそれ以上のことを与えてくれる。外に出たくないほど寒い午前3時に、目覚ましアラームを設定したいと思わせてくれる。
マネッティーノのチョイスは、悩む必要なし。スポーツ・モードはサーキットでは不満足でも、一般道を熱く走りたいドライバーには丁度いい。たとえ多少濡れていても。
トラクションがウェットでは足りていないという事実は、とても残念。しかし、タイヤには敏感なようで、ミシュラン・パイロットスポーツ4Sの方が、ピレリ・Pゼロよりはるかに優れた挙動を示していた。
いずれにせよ、アクセルペダルさえ丁寧に扱えば、ローマは喜びと驚きで満たしてくれる。まず、ボディが実際よりコンパクトに感じられることに驚かされる。
全幅は1974mmだから、確かに大きい。でもコンパクトであるかのように、狭い道を完璧にトレースできる。F8トリブートの良くない特性の1つ、ステアリング切り始めの超が付くほどアグレッシブな反応が、一歩穏やかになっていることにも驚いた。
動的性能にも感心しきり。フェラーリ基準でいえば、特にパワフルでもないし、ライバルと比べれば特に軽量なわけでもない。しかし、これ以上誰が不満を感じるのかと疑問を覚えるほど、鋭く加速する。