【速く楽しく、控えめでコンパクト】トヨタGRヤリス(初回) 長期テスト 2021年での意味深さ
公開 : 2021.01.17 11:45 更新 : 2021.07.12 18:56
トヨタらしい気遣い 不満の少ない運転姿勢
筆者もシートヒーターの類は付いていた方がうれしいが、対処はできている。寒い日の朝でも、GRヤリスはすぐに車内を暖めてくれる。ちゃんとトヨタだ。
エンジンが温まるまで急加速しないようにも教えてくれるし、ステアリングホイールに付いたボタンを長押しすれば、始動の度にオンになるレーンキープ・アシストをオフにできる。この辺りの気遣いもトヨタらしい。
車内のレイアウトは、よく考えられてある。ダッシュボード中央のタッチモニターは、スマートフォンとのミラーリング機能にも対応。標準のシートは、サポート性に優れる。
ドライビング・ポジションで気になったところは、リアミラー。取り付け位置が低くドライバーに近いから、カーブが続くような道では特に死角が生じやすいと感じた。
同僚の中には、アクセルとブレーキのペダルが離れていて、ヒール&トウがしにくいと感じる人もいるようだ。筆者は、それほど難しいとは思わなかった。
昔ながらの話題ができるなんて、楽しいクルマだ。GRヤリスは、ドライバーとの関与が深いということを示す内容でもある。
トランスミッションはキチリと決まる6速MT。ハンドブレーキは、従来的なドライバー横のレバータイプ。走行中にサイドブレーキを引くと、リア・ハーフシャフトの接続が解かれる。しかも、GRヤリスはかなりエネルギッシュ。
2021年のクルマとしては、少し浮かれた内容にも思える。1995年に戻ったようだ。
速く楽しく、控えめでコンパクト
全長は3995mmで全幅は1805mmとコンパクト。パワフル過ぎないという点も、評価している。それでも1.6Lという小さなエンジンから、260psの最高出力を生み出す。ターボのブーストが効いていることも、良くわかる。
メカニズムの精度や感触の濃さは、ホンダ・シビック・タイプRほどはないかもしれない。しかし、機敏な身のこなしと操縦性の良さは、近年では珍しいほど高い。
少し先にあるカーブが連続する道でも、日常的に走る道でも、ドライバーをホットにしてくれるクルマであることは間違いないだろう。一部のスポーツカーのように、ノーズを路面にこする心配は必要ない。
速く楽しく、控えめでコンパクト。90年代に触発されたようなトヨタGRヤリスだが、2021年においても、とても意味を持つものだと感じている。
セカンドオピニオン
すでに多くの同僚が、長期テストのGRヤリスを借りて乗りたいと列をなしている。わたしも早速、希望の日程を申し出た。11月のワインディングと同じくらい、夏場のサーキット走行も楽しめるのか、今から気になっている。
GRヤリスも、完璧ではないだろう。だが素晴らしいクルマによって、多くの発見が得られることは、うれしいことだと思う。 Matt Saunders(マット・ソーンダース)
テストデータ
テスト車について
モデル名:トヨタGRヤリス・サーキット・パッケージ(英国仕様)
新車価格:2万9995ポンド(419万円)
テスト車の価格:3万4080ポンド(477万円)
オプション装備
サーキット・パッケージ:3500ポンド(49万円)
プレシャス・ブラック・ペイント:585ポンド(8万2000円)
テストの記録
燃費:12.2km/L(WLTP値)
故障:なし
出費:なし