【トヨタ上位独占】販売ランキング、集計方法で異なるも「1強」 今後の車種展開も注目

公開 : 2021.02.02 05:45  更新 : 2021.10.22 10:13

いっぽうでプリウスアクアは低迷

トヨタ車が販売ランキングの上位に数多く入った理由として、トヨタが国内販売体制を変更したことも挙げられる。2020年5月から、東京地区に続いて、全国的にトヨタの全店で全車を販売するようになった。

その結果、好調に売れる車種は、トヨタ全店(約4600か所)で売れ行きを伸ばす。逆に低調な車種は、好調な車種に顧客を奪われた。

トヨタ・アルファード(上)/ヴェルファイア(下)
トヨタ・アルファード(上)/ヴェルファイア(下)    トヨタ

例えば人気車のアルファードは、以前はトヨペット店のみが扱った。ネッツトヨタ店のユーザーは、姉妹車になるヴェルファイアを購入していた。

トヨタ店ではアルファード、ヴェルファイアともに販売していないから、仮にクラウンからアルファードに乗り替えるとすれば、販売店を変更する必要が生じた。

このような経緯もあり、ネッツトヨタ店の顧客はヴェルファイア、トヨタ店の顧客はアルファードに魅力を感じながらも従来どおりクラウンを購入していた。

ところが2020年5月以降は、すべての店舗でアルファードを買える。トヨタ店としても、クラウンの顧客がアルファードに乗り替えるのを引き止める理由はない。

そのために人気車のアルファードでは、2020年下半期(7~12月)の登録台数が前年の1.6倍に増えた。逆にヴェルファイアは、基本的に同じクルマなのに、前年の半数以下に減った。アルファードとヴェルファイアでは、今では7倍の販売格差がついている。

2020年におけるトヨタの対前年比は、前述のとおり7%減少したのに、販売ランキングの上位にはトヨタ車がズラリと並ぶ。その背景には、売れる車種はさらに伸びて、下がる車種は一層低迷する二極分化があるわけだ。

プリウス/アクア/ヴェルファイアの登録台数は、前年に比べて40%以上も減った。C-HRも40%弱のマイナスで、かつての人気車が軒並み減少している現実もある。

二極分化の国内販売 リストラ加速?

二極分化したトヨタの国内販売からは、今後の動向も読み取れる。現時点で売れ行きを伸ばしたり、堅調に売れる車種は、今後もラインナップされる。逆に売れ行きを下げた車種は、廃止される可能性が高い。

既にコンパクトカーのポルテ&スペイド、ルーミーの姉妹車となるタンクは終了した。今後はセダンのプレミオ&アリオン、ワゴンのプリウス・アルファも廃止される。ヴェルファイアの廃止は公表されていないが、アルファードとの販売格差を見ると、廃止される可能性が高いだろう。

トヨタ・クラウン
トヨタ・クラウン    トヨタ

クラウンをSUVに変更する報道もあった。現行クラウンは若返りを図ってスポーツ指向を強めたが、本来の魅力は、安楽な乗り心地、静かで滑らかな運転感覚と、走行安定性を両立させたことだ。このクラウンの特徴は、低重心で後席とトランクスペースの間に隔壁を設けて剛性を高めたセダンボディでないと実現できない。

つまりクラウンをSUV化するアイデアはナンセンスだと筆者は思うが、そんな話が持ち上がるほどに、今のトヨタの国内販売は合理化を迫られている。

2020年の販売ランキングを見ると、トヨタの活躍が華々しいが、この先には厳しい展開も待ち構えている。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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