【ラリー・モンテカルロ優勝】1931年インヴィクタSタイプ 時価2億8000万円 前編
公開 : 2021.02.06 07:25 更新 : 2022.11.01 08:55
歪んだインヴィクタで掴み取った優勝
リアのドラムブレーキは、直線でのみ効かせることにしていた。インヴィクタが咆哮を上げ、チームメイトのピアスが時計を握る。英国での練習走行で鍛えた実力を、すべて出し切ったドナルド。走り終えると、周囲の話も聞かずベットへ直行した。
何しろ、カフェインを取りながらクルマで4泊もしたのだから無理もない。深い眠りに付いたドナルドだったが、総合優勝というビッグニュースを持って部屋に入ったピアスに起こされる。
偉業を締めくくるクライマックスとして用意されていたのが、モナコの山手で開かれたモン・デ・ミュル・ヒルクライム。ドナルドたちは、そこでも圧倒的な速さを披露した。
少なくない勝利を経験していたドナルドだったが、ラリー・モンテカルロでの優勝は別格。妻のアイビーへ電話し、モンテカルロでの祝賀パーティへ招いた。アイビーはパスポートを持っていなかったが、内務大臣の要請で認可がおり、王子主催の宮殿での授与式には間に合った。
一癖あるインヴィクタSタイプの操縦性ながら、その後も欧州でのラリーイベントに参加。成績を残している。
シャシー番号S73、「ローラースケート」というニックネームが付いた2台目のインヴィクタが用意されると、ドナルドは1931年のアルペン・トライアルへ出場。最高速度は160km/hへ向上しており、グレイシャー・カップで優勝。ガリビエ・ヒルクライムでは最速タイムを残している。
この続きは後編にて。