【14ブランドの玉手箱】PSA/FCA合併 ステランティスに秘めた可能性とは?
公開 : 2021.01.20 06:45 更新 : 2021.03.05 21:42
単なる部品共有性にとどまらず
筆者にとってのシトロエンは、若き日に触れたハイドロニューマチックサス採用のCXだ。親類からこの機構の特殊性を聞き、またその未来的なボディフォルムに圧倒された。
その後、筆者自身が世界各地で業務としてシトロエンに触れるようになったが、ブランドとしての方向性が揺らいでいるとの印象を長らく持っていた。
それが近年になり、いわゆるライフスタイル系ブランドとしての再構築が時代の流れにマッチし、直近ではベルランゴのヒットを生んだ。またプジョーも、206ブームから20年近くが経ち、今後は電動化戦略で新たなるムーブメントを築こうとしている。
このように、ブランド戦略という文脈でみると、FCAとPSAそれぞれが、現時点の事業が上昇気流にのっている。
そのうえで、ステランティスとなって傘下ブランドが倍増しても、それぞれのブランドがユーザーのライフスタイルに密着し、魅力ある唯一無二の存在であり続けることは、近年のFCAとPSAの動きを見る限り、十分に可能だと思う。
むろん、車体、電動パワートレイン、通信のコネクティビティ、またADAS(先進的運転支援システム)など開発投資が大きい分野については、部品共通性を高めることになるだろう。
見方を変えると……。
8位と9位が合併 gm抜いて4位へ
自動車産業全体として、クルマのベースとなる技術での差別化が難しいなか、各ブランドを時代変化にあわせて巧みに演出するポテンシャルを秘めるステランティスは、企業間アライアンスを重視する他の大手メーカーでは想定できない、飛躍の可能性を持っているのかもしれない。
2019年での販売台数で見ると、トップは独フォルクスワーゲン・グループ(フォルクスワーゲン、アウディ、セアト、スコダ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー)で1097万台。
つづく2位はトヨタで、3位:ルノー日産三菱アライアンス、4位:米gm、5位:韓国ヒュンダイ、6位:フォード、7位:ホンダ、そして8位がFCA、9位がPSAだった。
こうした8位と9位が合併したことで、gmを抜いて4位となるステランティス。
ただし、これはあくまでも大量生産・大量消費を前提とした順位づけに過ぎない。近未来の世界市場は、環境対応でのグリーン化や、デジタル化をフル活用するクルマの利活用が重視されることが現時点でも十分に予想できる。
つまり、自動車メーカーに求められるのは「数の論理」ではなく、新たなるサービス提供やブランド価値に強化における「収益性の向上」だ。
そうした中、ブランドの玉手箱であるステランティスが、どのようなブランドコントロール戦略を描くのか? 今後の動向を楽しみに見守りたい。