【自国だけではない】ICE新車販売禁止、世界に与える影響は 反グローバル化も
公開 : 2021.01.20 06:05
内燃機関(ICE)搭載車の新車販売禁止が世界の自動車産業にどんな影響を与えるのか、英国を例に考察します。
生産国にも大きな影響が
英国政府が2030年にガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止し、2035年にはハイブリッド車の販売も禁止するという決定は多くの人に歓迎されているが、その影響は国境を大きく超えている。グローバルな製造ネットワークにも大きな影響を与え、今日売られている量産モデルに別れを告げることになるかもしれない。
英国でのバッテリー式電気自動車(BEV)の販売台数は2020年には前年比185.9%増となり、市場シェアは6.6%に達するが、大半はいまだにガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)など内燃機関(ICE)を搭載している。
世界のほぼ全大陸26か国が英国に自動車を供給しており、その多くはICE車しか製造していない。2019年のトップ5はチェコ共和国、トルコ、南アフリカ、ポーランド、イタリアとなっている。
チェコ共和国では国内総生産の9%を自動車産業が占めており、2019年には15万4468台のガソリン車とディーゼル車を英国に輸出した。昨年からは、ヒュンダイ・コナ・エレクトリックとスコダ・シティゴiVに加え、スコダ・スペルブとオクタヴィアのPHEV版が登場し、新時代に突入した。
チェコで製造されるスコダ・エンヤクiVは今年発売予定。ICEを搭載したカロックとコディアックの間に新しい電動SUVが登場するという噂もあるが、今年末に発売予定の新型ファビアは電動化されていない。
チェコ共和国の自動車工業会のヴォイテック・セヴェリンは、次のように述べている。
「わたし達はすでに数年前から自動車部門の変革に向けて準備を進めてきました。自動車メーカーはEUの規制の圧力にさらされており、今後のトレンドに向けて十分な準備をしています。2020年には、PHEVを含む複数のBEVを導入しており、ヒュンダイ、スコダ、トヨタの3社は、今後数年で他の多くの低排出ガスモデルを展開していくでしょう」
「過去1年間の市場の発展は、多くの国で消費者が低排出ガス車を採用する意欲を示しており、自動車メーカーは、英国だけでなく世界中の消費者の期待と同様に、気候目標を達成するために最善を尽くすでしょう」
同一ラインでICEもEVも作る
自動車製造戦略の変更を余儀なくされているのはチェコだけではない。南アフリカではBEVを全く生産しておらず、ハイブリッド車はメルセデス・ベンツCクラスのみである。
南アフリカは、2019年に10万1401台の自動車を英国に輸出した。その中には、BMW X3やフォルクスワーゲン・ポロなど売れ行きのモデルに加え、フォード・レンジャーやトヨタ・ハイラックスなどの人気ピックアップ車も含まれている。
BMWは現在、X3のPHEVバージョンを生産するため、現地の工場で技術的な問題を解決しようとしているとコメントしているが、電動のiX3の製造は中国で行われているため、南アフリカで生産する可能性は低いと思われる。将来的には英国を輸出先リストから外す可能性がある。
BMWの多くの工場では、複数のドライブトレインを生産する体制に移行している。同社のグローバル生産責任者であるミラン・ネデリコビッチは、AUTOCARに対し「わたし達は、内燃機関車と電気駆動系の両モデルを単一ラインで生産し、顧客の要求に柔軟に対応することができます」と語った。
同氏は、2023年までに展開する25の電動モデルのうち半数を完全電動化するという戦略を進めるBMWにとって、これは重要な成功要因であると説明した。
しかし、BMWは内燃機関の禁止よりも、EVへの移行に向けたインセンティブを望んでいるという。