【自国だけではない】ICE新車販売禁止、世界に与える影響は 反グローバル化も

公開 : 2021.01.20 06:05

EVは先進国、ICEは発展途上国向け?

フォルクスワーゲンはすでに、ドイツにある116年の歴史を持つツヴィッカウ工場をEV生産に切り替えている。今後数年間で、フォルクスワーゲン・グループはMEBプラットフォームでEVを生産する工場を35か所に増やす。しかし、2019年に3万6000台以上のポロを英国に輸出した南アフリカでは、そうはいかないだろう。

フォルクスワーゲンは、英国やその他の市場向けにポロのBEV版を製造するのは非常に難しいだろうと語った。その代わり、アフリカなどの市場に向けてのみICEのポロを生産すると述べている。

フォルクスワーゲン・ポロ
フォルクスワーゲン・ポロ

アフリカ自動車工業会のデービッド・コフィー会長によれば、アフリカ大陸での新車販売台数は現在の年間110万台から2035年には500万台以上に増加する可能性があり、そのほとんどは依然としてICE車になるという。

南アフリカのイースト・ロンドン工場で英国向けにCクラスを生産しているメルセデス・ベンツでは、世界市場の需要に対応できる柔軟性が鍵を握っている。

メルセデスは、2022年までに高級セダン「EQS」など6台のBEVを販売する計画だ。EQSはドイツのシンデルフィンゲンにある新工場「ファクトリー56」で生産される予定だが、この工場は世界中の生産施設の見本となり、同じラインであらゆるパワートレインを生産することができる。しかし、南アフリカの工場では、この青写真を採用するために多額の投資が必要となる。

メルセデス・ベンツの生産・サプライチェーン担当役員であるイェルク・ブルツァーは次のように述べている。

「メルセデス・ベンツの生産ネットワークは、グローバルでデジタルかつ柔軟性に富み、今後のEV攻勢に備えています。2022年までに6台の電動モデルを発売するというのは、世界中のメルセデス・ベンツの生産拠点の強さと能力を裏付けるものです」

反グローバル化の流れ

フォードは今年、初のBEVモデルであるSUVのマスタング・マッハEを英国に導入する予定だ。しかし、今後の戦略を変更しなければならないメーカーでもあり、英国で購入できるモデルに影響を与える可能性がある。

フォードの広報担当者によると、ピックアップトラックのレンジャーは現在南アフリカから供給されているが、電動化されることはないという。F-150のEVバージョンが今年米国で生産される予定だが、英国のレンジャーもF-150に置き換わるのだろうか。

三菱アウトランダー
三菱アウトランダー

すでに各メーカーが世界的な生産ネットワークやモデル戦略を根本的に変えているため、英国ではポロやレンジャーのようなモデルに終止符が打たれるのかもしれない。

パワートレインに関する法規制の影響もあって、特定の市場に対応するために生産をローカル化する企業が増えるかもしれない。英国と欧州を離れてアジアに集中するという決断をした三菱も1つの例である。

これまで長年にわたりグローバル化が進んできた自動車業界にとって、これは逆転現象のようにも見える。だが、輸送に起因する膨大なCO2排出量の削減など、メリットも多いだろう。

英国は世界の自動車生産のほんの一部に過ぎないが、ICEの新車販売の販売を禁止する決定が世界中に影響を与えることは明らかである。

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