シトロエンC4グランド・ピカソ

公開 : 2014.01.06 11:41  更新 : 2021.03.05 21:44

イントロダクション

先代のシトロエンC4ピカソは、われわれがシトロエンのミニバンに期待する全ての実用性と快活さを備えていた。しかし不幸にも、われわれが期待した走りの楽しさには欠けていた。

誤解をしないで欲しい。われわれはこうした大きなサイズのファミリーカーにスポーツ性や力強さを求めているのではない。しかし、フォードS-Maxが鮮やかに示したように、ドライブを楽しむ同乗者たちと同じくらい、ドライバーが楽しく運転できるクルマを作ることは可能なのである。

ミニバンに何人が乗って出掛けようと、誰か一人は運転席を離れられない。

彼らのことを思いやって何が悪いというのだ。その点、今回のクルマは非常に期待できそうなのである。

新しいC4ピカソ5シーターとその兄弟車となる7シーターのグランド・ピカソは、先進的な新型プラットフォームを採用し軽量化も図られている。先日初試乗した限りでは、このクルマは同乗者に卓越した環境を与えるだけでなくハンドルを握る人にもずっと大きな喜びを与えてくれた。

新しいC4グランド・ピカソはオートカーの様々なロードテストの後でも、変わらずわれわれを満足させてくれるだろうか? それでは始めるとしよう。

デザイン

ピカソの名前を冠した最初のシトロエンは1999年発表のクサラであった。クサラピカソは大変な人気を博し、新世代シトロエンが生まれてクサラのレギュラー・モデルが生産終了したあとも、2010年まで販売が続けられた。ピカソはその間にシトロエンの用語でミニバンを表すモデル名となった。

2006年にC4グランド・ピカソという7人掛けモデルが初めて公開され、5人掛けの”小型版”グランドの方は翌年に登場している。

最新型のC4ピカソは外から見る限り、華やかで見たことのないスタイリングをしている。しかしボディの下にあるものは、近頃耳にする機会が増えているはずだ。EMP2(エフィシェント・モジュラー・プラットフォーム)構造という名で知られるプジョーとシトロエンの新型車用プラットフォームである。このクルマはそれを採用した第一弾モデルなのである。

こうしたプラットフォームの共用化戦略をためらうメーカーも存在する。

PSA(プジョー・シトロエン)はそうした懸念に陥らずに、むしろその恩恵を最大限に活かそうと努めており、EMP2を紹介するウェブサイトまで設けている。

PSAグループの総生産台数の約50%を占めるCセグメント、Dセグメントの全モデルに採用されるこのプラットフォームは、開発中におよそ116のパテントが申請されている。

このEMP2を初採用したモデルがC4ピカソ及びグランド・ピカソとなり、スペインのビーゴで生産される。同じくEMP2を採用するプジョー308はフランスのソショーで生産される。中国でも武漢にあるPSAの工場において来年2014年から生産を開始する。PSAが言うには、EMP2プラットフォームはハッチバックとミニバンだけでなく、サルーンやSUVモデル、クーペ、さらにはカブリオレにまで適用可能とのことだ。

軽量化については、高降伏点鋼、アルミニウム、複合素材の使用により実現されている。グランド・ピカソの場合は、ボンネットがアルミ製で、テールゲートが複合素材だという。

新世代のグランド・ピカソは全長が先代と同じ4590mmなのだが、新プラットフォームの採用によりホイールベースは2840mmへと110mmも拡大された。同クラスの中では最長になったとシトロエンは胸を張る。

とりわけフロント・オーバーハングが116mm短くなったことを考えれば、ホイールベースの拡大分はキャビンの広さを大きく改善することになる。

また、エンジンは先代より50mm低くマウントされ、フロアは20mm低くなり、トレッドはフロントを82mm、リアを31mm拡大している。グランド・ピカソには室内空間を広々と開放感のあるものにするすべての要素が揃ったのだ。サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット、リアがトーション・ビームである。

メーカーはEMP2が前モデルより最大100kg軽量化されたと言っている。しかしながら、2006年モデルのピカソの重量測定結果は1603kgで、今回のクルマは1685kgとなっている。このテストカーにはオプション装備が追加されているとはいえ、この重さは期待していた結果ではない。

さらに、CO2排出量と燃費も改善されている。ラインアップされたエンジンの中では、最高出力90psの1.6ℓe-HDi 90エアードリームが優れた記録を出している。このエンジンとETG6オートマティック・ギアボックスを組み合わせた標準的なユニットでは、素晴らしいことにCO2排出量98g/km、燃料消費率26.2km/ℓというクラスベストを記録したのだ。

最高出力115psの1.6ℓ e-HDi 115には6段マニュアルとオプション設定のETG6オートマティックが提供される。新開発の最高出力150psの2.0ℓ ブルーHDi 150エンジンは110g/kmというCO2排出量を標準の6段マニュアルでもオプションの6段オートマティックでも実現している。アイドリング・ストップはディーゼル・モデルには標準装備だ。

ガソリン・モデルには2種類の1.6ℓユニットが用意された。最高出力120psのVTi 120は自然吸気エンジンと5段マニュアルの組み合わせとなる。より強力な155psを発するTHP 155はターボチャージャー搭載エンジンとなり6速マニュアルと組み合わされる。

アイドリング・ストップと先進的なディーゼル・エンジンを備えた2.0ℓブルーHDi 150は、最上級グレードのエクスクルーシブ・プラス、6段マニュアルという仕様でもCO2排出量が113g/kmを記録する。排気量と出力を考えればこの数字は素晴らしいものだ。最高出力の150psは4000rpmで、そして最大トルク37.7kg-mはなんと2000rpmで発生する。

インテリア

過去の慣例に別れを告げるのが、今ではミニバン設計の慣例となっている。しかし、このC4グランド・ピカソのインテリアは、奇抜さで人気のあったクサラピカソへのオマージュとなっている。

しかしシトロエンのアイデアはこれだけに留まらない。慣れ親しんだ手触りとは異なる高級車向けの上等な布地からも分かるはずだ。これはラグジュアリー性とエキセントリックな要素を同時に提供するミニバンであり、1、2箇所を除いて全てがうまく両立されている。

ダッシュボード中央にメーターパネルがないピカソなどピカソとは言えまい。しかし、メーターパネルのあるべきところに、見たことがないカラーLCDパネルが装備されていてカスタマイズも可能だという。それに上品なツートン・ダッシュボードとエアコンの吹出し口、光沢のあるクロムで華やかに縁取られたステアリングとセンターコンソールまで揃っている。

最上級グレードのエクスクルーシブ・プラスには洗練された装飾が施される。正直なところ、エントリーモデルまで具合よくまとまっているわけではない。例えばカラーLCDはモノクロ表示になるのだ。しかし、一番シンプルなVTRグレードさえ、先代に比べてずっと新型車らしい満足感を味わえるのは賭けてもいい。

運転席は想像よりもかなり高い場所に腰掛けることになる。しかし、操作系の配置はいいし調整幅も大きく、それに前列シートは広いので快適だ。ただ一つの不満はヘッドレストの調整機能がないことだけだ。頭上まで広がるフロントガラスと大きなガラス・ルーフのおかげでキャビンは太陽光に満たされる。

その一方で、収納スペースなどの実用的な装備はありふれた物だ。ピクニック・テーブルと、その上にボトルなどを固定するゴムバンドも代わり映えがしない。2列目のスペースはクラス内では広い部類に入り、とりわけレッグルームの広さは優秀と言える。

3人を座らせるには依然として人を押し込む必要がある。しかし3列目に大人を座らせてしまうと帰りはもう座ってもらえないだろう。だが、こうした制限は中型サイズのミニバンでは一般的なことであり、われわれもそのことでピカソを批判するつもりはない。

テストでは標準装備のブルートゥースは、ペアリングに要する時間も短く接続が途切れることもなく、うまく機能していた。そしてピカソのもう一つのこだわりは、オプション設定のマルチシティ・コネクトである。これはトリップ・アドバイザー、ヴィア・ミシュラン、フェースブック、それにメーラーといったアプリケーション用の3G接続を提供するものである。ただし非常に値が張るオプションだ。

最もシンプルなグレードを除いてDABラジオ・チューナーが標準装備される。これは直感での操作性には劣るが、受信能力は優れているようだ。ステレオは6スピーカーのみが設定される。特別に優れているものではないが、音の鮮明さとパワーについては十分以上のものがある。マルチシティ・コネクトにはゲームやソーシャル・メディアといった機能も追加されている。

エクスクルーシブ・グレードで標準となるシトロエンのeマイウェイ・マルチメディア・システムは、地図機能が欧州全土を網羅しており追加のUSBポートも備わる。これまでテストした中で、純正品として一番行き届いたものとは言えないが、動作は比較的速いものである。

パフォーマンス

われわれが唯一テストできた2.0ℓブルーHDiというターボディーゼル・パワートレインに、プジョーとシトロエンは大きな望みを抱いている。豊かなトルクからも分かるように確かにポテンシャルに優れ、NEDC(新欧州ドライビングサイクル)排出ガス試験でも公式に優れた結果を出している。

ピカソとの相性はいいが、多くの新型エンジンと同様に優れたものになるにはさらなる開発が求められる。デイリーユースではピカソのこの最上級ディーゼルは驚くほど静かなうえに滑らかで、こうしたタイプのエンジンとしてはレスポンスにも優れている。

6速マニュアルはギアレシオの組み合わせはいいのだが、とりわけ1速と2速の間でギアリンケージがぎくしゃくと不快な動きをして、シフトアップをし損なうこともあり得る。

従来型のクルマは現在のシトロエンではお宝物になっていて、フランスのメーカーは変速に手間取るオートマティックを好み不愉快な思いをさせられる。しかし、シフト操作はブルーHDi 150搭載の6段オートマティックでは滑らかになり、ギアレシオの組み合わせもよく、必要なときに速い反応ができるのだ。ステアリング上のパドルによるマニュアルシフト操作にも完全対応している。

このクルマの標準的な使い方を超えてしまうと、エンジンの至らない点が気になり始める。高めのギアで低回転から加速をすると、中間加速タイムの結果が示すように時間を要してしまうのだ。また、低回転で負荷が掛かるとカタカタとぎこちない動きをし、4000rpmを超えても安定しないのである。

ほとんどのピカソオーナーは常用回転域を外れるほどの運転はしないので、限界を超えたエンジンの不安定さに直面することもないだろう。もしあったとしても、燃料効率や走りの扱いやすさに優れるクルマに不満を口にする理由がほとんどないのだ。というのもわれわれはツーリング・テストにおいて17.7km/ℓ以上の燃料消費率を記録したのだ。このクルマの2.0ℓディーゼル・エンジンは最高出力150ps、最大トルク37.7kg-mを発する。燃料効率を優先したミニバンでライバルに対抗したいなら、結局のところ大幅に馬力の少ない1.6ℓディーゼルモデルを選ぶしかないのだ。

そのことを頭に入れておけば、このクルマに概ね満足できるだろう。本来の機能を考えるとミニバンのボンネットに立派なエンジンが収まる必要はないのだ。そしてグランド・ピカソもそれを必要としていないのである。それでも新型のエンジンには、手に入れたら楽しそうだと思わせる魅力があるのだ。

エントリー・モデルのディーゼル・エンジンはパフォーマンスがずっと劣るものになるだろう。しかし、ブルーHDi 150は適切なパフォーマンスで車体との相性にも優れている。小排気量モデルを選んでしまうと大きなグランド・ピカソを走らせるのには苦労して、荒っぽくスロットル踏むばかりで燃費を悪くするだけだろう。

乗り心地とハンドリング

このテスト項目こそプジョー・シトロエンの新型プラットフォームの出来が前面に現れるところだ。今年2013年の初頭、レギュラーモデルのC4ピカソに初めて触れ、シトロエンがワンボックス・モデルの動力性能をクラス内で誇れる水準まで向上させたと感じたのだ。

このクルマは、大きなサイズの乗用車に必要な走りの柔軟性を持っている。しかし、高速域での不安定感、あらゆるコーナーでのグリップ不足、不十分なコントロール性、そしてステアリングの一貫性の欠如には代価を払っていない。特別に突出している点はないにもかかわらず、非常に重要なポイントでは優れており、われわれはクラスの中でもベストな一台だと位置づけている。

ステアリングは大き過ぎるし、フラット・ボトム・タイプのリムは操舵中に気に障る点でもある。

それでもこのステアリングはわきまえた走りに焦点をあてたシステムなのだ。常識的なグリップレベルではバランスの良さと調和して動作し、そしてシャシーの方はボディロールを許すがロールの変化量と極限での角度は制御する。この点は、本当に一貫している。

ごく僅かだがフィードバックも手に伝わってくる。負荷の掛かり始めはラックがスポンジのようだが、操舵中は適切な重みが維持される。そして横方向の力が車体に加わっても、フロントのグリップが突然失われることはない。

小さい車が備える軽快さと扱いやすさ、それにロールによる快適さも加わって、そうしたすべてを取り入れて、ピカソのハンドリングは素晴らしくしてどんな状況でも困らないと感じさせるのだ

ピカソに装着されるミシュランのパイロット・スポーツは、ウェット・コンディションではかなり悪名が高い。それだからこそシトロエンがこんなに大きなクルマに十分な安定性とステアリングの正確性、優れたグリップバランス、とりわけ高度なESPシステムを与えたことは大きな賞賛に値する。

常に作動してはいるのだが、ESPは知らぬ間に介入し、スムーズさと正確さを与えドライバーの無茶を救うのである。しかしドライバーがパワーを加えてスライドさせようすれば、それを止めることはしない。

ドライ・コンディションでのピカソは具合のいいバランス加減で、スピードが出過ぎると徐々にアンダーステアを強めようとする。そう、われわれはこの手のクルマにはこうあって欲しかったのだ。ピッチングとロールはいつでも効果的に抑制されるのも特徴だ。

乗り心地は時おり落ち着かず少しだけ神経を使うところがある。しかしそれは、テストカーに装着された18インチ・アロイホイールと扁平タイヤ、そしてバネ下重量のせいだとわれわれは考えている。

これは、走りに魅力のあるクルマではないし、結局のところ、フォード・S-Maxのようにミニバンに対する期待を超えることもない。それにもかかわらず、このビッグC4のハンドリングは、ピカソやシトロエンに期待していたレベルよりもはるかに洗練されていて、依然として魅力的に感じるのだ。以上、参考にして欲しい。

ランニング・コスト

資産価値の下落が鈍いシトロエンなど存在しない。しかしC4グランド・ピカソの場合は、ディーラーへ確認しても分かるように横ばいで推移しており、ノン・プレミアムのミニバンと同等である。

残存価格はヴォグゾール・ザフィーラ・ツアラーにさえ僅差で勝っている。これはシトロエンのクルマとしては異例である。どちらもベンチマークとなる性能を持ち合わせていないし、概してフォード・グランドC-Maxにも差をつけられているのだから。

オートマティック・ギアボックスのモデルは避けるべきである。それに、嘆かわしいモノクロ・モニターよりも、スタイリッシュなカラーLCDを備えたモデルを選ぼう。それ以外は、好きにしてもらえばいい。

ほとんどのシトロエンのエンジンは、信頼性にも経済性にも優れることが分かるはずだ。一番のお勧めはきっとブルーHDiモデルだ。このモデルはテスト全体で燃料消費率が15.6km/ℓに達して、ツーリング・テストでは18.1km/ℓを記録した。1,700kg近い7シーターにしては見事である。

サービス・インターバルは2万マイル(約3.2万km)毎で、ブルーHDiについては現物給与税の負担は17%となる。

結論

長年にわたりピカソは商業的な成功を奇抜性に頼ってきた。そして確かに成功してきた。

しかし、この新型はいままでとは違うビジョンを持っている。パフォーマンスと実用性、それに高度なドライビング・エクスペリエンスを備えて、大勢に売るだけではなくエキセントリックな大胆さに魅了された人々へも売ろうとしている。

冷静に考えて判断する人は、このクルマの広さと多用途性と燃料効率に注目するはずである。シトロエンはまた極上のスタイリング、色使い、上品さ、標準装備における素材の豪華さというアイデアをこのクルマに取り入れた。そのうえ走りの性能でもクラス最高水準に届こうとしている。

ピカソにはお馴染みの欠点もある。立て付けと仕上げの品質は依然として最高レベルではない。エンジンには改良の余地があり、付属のシステムにはしかるべき役割を果たさないものがある。

しかし、このクルマは走りの性能は非常に優れている。人を引きつける新しい次元の魅力もある。7人掛けミニバンの検討リストから外すべき重大な欠陥は確かに存在しない。

このクラスにはもっと鋭い走りのクルマは存在する。しかしこのセグメントの買い手は、手にしたチェックリストを一つ一つ確認して、C4グランド・ピカソの素晴らしいルックスに、開放感のあるインテリアに、シートアレンジの自由度と、そして有り余るほどのスペースにチェックマークを入れるだろう。

シトロエンC4グランド・ピカソ・ブルーHDi150エクスクルーシブ

価格 £25,455(442万円)
最高速度 205km/h
0-100km/h加速 10.2秒
燃費 21.7km/ℓ
CO2排出量 120g/km
乾燥重量 1476kg
エンジン 直列4気筒1997ccターボ・ディーゼル
最高出力 150ps/4000rpm
最大トルク 37.7kg-m/2000rpm
ギアボックス 6速オートマティック

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