【詳細データテスト】ロールス・ロイス・ゴースト なめらかな駆動系 快いハンドリング 極上の静粛性
公開 : 2021.01.23 20:25
走り ★★★★★★★★★★
ゴーストのオーナーは、パフォーマンスの数値にそれほどこだわらないかもしれない。しかし、あくまで客観的にこのクルマのポテンシャルを査定していけば、2490kgもある大型サルーンとしては並外れて速いことを思い知るだろう。
6.75Lもの排気量を誇るV12、そのパワーとトルクをひたすら解放することは難しくない。しかし、最大限に活用しようと思ったら、スリムなコラムシフトレバーに設置されたLOWボタンを押す必要がある。
するとゴーストは、上品なまでの平静さをかなぐり捨てる。少なくとも、発進時に2速ではなく1速を使う程度には。それからの変速ぶりはアグレッシブ。各ギアをより長くホールドし、間を置かずにシフトチェンジし、キックダウンも通常より頻繁に利用する。
それでも変速が極めて滑らかなのは、出来のいいZF製トランスミッションと、その電子制御系の熟練したチューニングとの賜物だ。ゴーストは、リアを深く沈めたのち、4.7秒という目覚ましいタイムで97km/hに達した。やや路面の湿ったコースコンディションだったが、四輪駆動システムがトラクションを失うようなことはまったくなかった。
1秒をも惜しむほど多忙なオーナーにとって、もうひとつ心強く思うだろうデータがある。48-113km/hのキックダウン加速は、たったの3.8秒なのだ。参考までに、このクラスではロケットのように思えるフライングスパーでさえ、これよりほんの0.6秒速いだけだ。
もちろん、これらの数字が現実的な場面で持つ意味合いは小さい。また、ゴーストのようなクルマのパフォーマンスで考慮すべきは、その数値的な指標より性質にある。その点でいえば、このV12は笑えるくらい上品だと表現しても過言ではない。
カリナン登場時にロールス・ロイスは、この12気筒へトルクを上乗せしたが、その分が必要になることはまずない。だが、ゴーストが粛々と速度を上げていく際にみせる、ほとんど重量を意識させない感覚は、この大トルクによって高められている。
同じことは現行ファントムでも味わったが、エンジンレスポンスのリニアさや、回転計代わりのパワーリザーブメーターを見ていなければ気づかないようなシフトチェンジは、途切れることのないドライバビリティをもたらす。それは、電気自動車でなければ出会えないと思っていた領域だ。
さらに、スロットルとブレーキのペダルの踏み応えも絶妙。結果として、巨大で、表面上は緩慢なリムジンかと思わせながら、予想を裏切って、走らせるのが楽しいクルマとなっているのである。