【詳細データテスト】ロールス・ロイス・ゴースト なめらかな駆動系 快いハンドリング 極上の静粛性
公開 : 2021.01.23 20:25
快適性/静粛性 ★★★★★★★★★☆
快適性を追求したクルマはどれもそうだが、ゴーストのボディパネルの下にも数知れぬ努力が隠されている。
ロールス・ロイスがアーキテクチャー・オブ・ラグジュアリーに施した工夫は、寸法や各部ごとの剛性向上、路面からの反響音を可能な限り打ち消すべく必要以上に複雑な形状としたアルミ部材など、数え上げたらキリがない。
バルクヘッドとフロアは、吸音フェルトを挟み込んだ2層構造で、ウインドウは2重ガラス。ピレリのPNCSタイヤは、吸音スポンジを内蔵する。使われた遮音材の総重量は、100kgを優に上回る。
であるから、ゴーストの静粛性がきわめて高いのは驚くことではない。アイドリングでは、V12エンジンのサウンドがキャビンに進入するのがみごとに抑えられ、騒音計測値は40dBにとどまる。これは、ひと気のない郊外の通りより静かだ。
113km/h巡航時は58dBで、フライングスパーの64dBはおろか、ファントムの60dBすら凌ぐ。これにより、ロールス・ロイスはもっとも厳しく、もっとも困難で、おそらくもっとも費用のかかる開発水準にあっても、大きな進歩を成し遂げたことを示してみせた。
このクルマに乗り込み、金庫室を思わせる扉を閉めると、まるで別の次元へ移動したようだ。外の世界とは、遠く切り離されてしまったかのように感じられる。
追い越し車線を走っているときに、すばらしくクリアな音質で音楽を聴きながらウトウトしていると、本質的に正真正銘のラグジュアリーとは、最新のスーパーカーで高いGを感じながらコーナリングするのと同じくらい、ワクワクして魅力的なものかもしれないと思えてくる。
乗り心地は、フロントアクスルに新設されたマスダンパーの恩恵で、ファントムで見知ったようなものとなっていて、ボディは物憂げな波長の長い動きを許容する。だが、まったく同じレベルというわけではない。
玉に瑕なのがセカンダリーライドだ。おおむねエクセレントなのだが、ときおり路面からの細かい振動をはっきりと伝えすぎてしまうのだ。この点では、遠からず試乗するだろうメルセデス・ベンツの新型Sクラスのほうが優っている可能性はある。その判定は、近いうちにお伝えできるだろう。