【1000km走るタイヤ設計者】冬のドライビング/開発の現場 ミスター・スタッドレスの声

公開 : 2021.01.26 06:45  更新 : 2021.10.11 11:30

ウインタードライビングの準備はできていますか? スタッドレスタイヤの設計者の声が届きました。北海道で1000kmは走るという開発現場の様子を聞きましょう。

試作/評価の繰り返し

text:Hidenori Takakuwa (高桑秀典)

幕張メッセ会場の開催が中止になった「東京オートサロン2021」のバーチャル展示に、ダンロップが出展。

深刻な大雪の報道がつづくこの冬のドライビングについて、スタッドレス・タイヤの設計者が、開発現場の声を特設チャンネル「パラレルTV」で届けてくれた。

住友ゴム工業のミスター・スタッドレス。タイヤ設計担当の中島 翔さんが「パラレルTV」に登場した。
住友ゴム工業のミスター・スタッドレス。タイヤ設計担当の中島 翔さんが「パラレルTV」に登場した。

ダンロップのスタッドレスタイヤは、「ウインターマックス03(WINTER MAXX 03)」シリーズ。密着までの時間を短縮する新アプローチで、氷とタイヤの密着力を向上した点が特徴だ。

パラレルTVに登場したタイヤ設計担当の中島 翔氏は、ミスター・スタッドレスと呼ばれる存在。

スタッドレスタイヤはやわらかく、ウインターマックス03はタイヤ表面の凹凸構造の突起部分が、いち早く水膜に到達することで、素早く除水をスタート。無数の突起が連続して除水を行い、素早く接地することで、タイヤと路面との密着時間が長いことなどを分かりやすく説明した。

また、スタッドレスタイヤは、1つの商品が出て、次の商品が出るまでに4年という長い年月をかけていること。

昔、日本でも使われていたスパイク付きのスタッドタイヤがロシア・北欧などではいまでも使用されており、ダンロップがその生産も手がけていることなども紹介した。

開発作業は、タイヤ設計担当者ならではの立場で、まず、「こういう商品を作りたい」というコンセプトを決める、設計する、部材を考える。

そして、クルマごとにタイヤのサイズが異なる点を考慮し(ウインターマックス03だけでも98サイズ)、試作する、評価する、その作業を繰り返し、それなりのものになったら冬に走行テストをする、修正する、再び評価する、といったことを何度も続ける。

100種類の試作 日本中を走る

スタッドレスタイヤの試作品は、100本を超えるという。

また、北海道に行かなくても冬季走行テストが可能な試験場が存在している、といったような開発の工程についても語ってくれた。

13~20インチまで、100種類近くのサイズをそろえる、ダンロップのスタッドレスタイヤ「ウインターマックス03」。
13~20インチまで、100種類近くのサイズをそろえる、ダンロップのスタッドレスタイヤ「ウインターマックス03」。

それに加え、実地での走行テストでは、さまざまな雪やアイスバーンがあるので、スタッドレスタイヤの性能を上げて、それらに的確に対応できるようにすること、テストで日本中を走り回ること、タイヤ設計担当の中島氏も北海道だけで1000kmぐらい走るといったエピソードも披露。

なお、雪道を安全にドライブするためには、常に周囲の状況をよく見ながら走ることが大事。

急発進/急ブレーキといった操作、急ぐ運転をしてはダメであることなどもレクチャーした。

走行ノイズを抑えることにも成功しているウインターマックス03は、氷上で止まれることを重要視している。現行タイヤは、2世代分の伸びしろを達成し、8年分の進化を4年で実現したとか。
 
次に目指すべきスタッドレスタイヤは、スパイクタイヤのようなレベルで氷上で止まることができ、なおかつロングライフで、その他の路面状況下においても快適に走ることができる“究極のオールシーズンタイヤ”であるとも語ってくれた。

記事に関わった人々

  • 高桑秀典

    Hidenori Takakuwa

    1971年生まれ。デジタルカメラの性能が著しく向上したことにより、自ら写真まで撮影するようになったが、本業はフリーランスのライター兼エディター。ミニチュアカーと旧車に深い愛情を注いでおり、1974年式アルファ・ロメオGT1600ジュニアを1998年から愛用中(ボディカラーは水色)。2児の父。往年の日産車も大好きなので、長男の名は「国光」

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