【WRCとともに歩んだ進化】三菱ランサー・エボリューションVI TMEとX FQ440 MR 前編
公開 : 2021.02.13 07:05 更新 : 2022.11.01 08:57
グループAで抜擢された4代目ランサー
1974年、ロンドン・モーターショーでコルトは111psを備える1.6LのランサーGSRを発表。だが、モデルとして短命に終わっただけでなく、英国で売られることもなかった。
ランサーの進化が本格的にスタートしたのは、1979年の東京モーターショーで2代目三菱ランサーが発表された時から。英国では、1980年のバーミングハムの自動車ショーでお披露目されている。
若干ワイドなホイールアーチをまとったボディに、当時としては優秀な172psのエンジンを搭載し、1981年に英国へ上陸。8999ポンドという価格は、フォード・カプリ2.8iより1000ポンドも高かった。
三菱のミドルクラス・モデルは混乱状態にあり、その後しばらくは、ギャランとミラージュがラリーステージで活躍する。3代目ランサーは、少し取り残された格好になった。
ランサーを盛り上げ直すに当たり、再び焦点が向けられたのがモータースポーツ。その頃、WRCは過激になりすぎたグループBにかわり、グループAが主役に移る。より少ないパワーと軽量なボディとの組み合わせで、強さを発揮できる条件になっていた。
大きく重いギャランは、小さく軽いモデルへ置き換えられる。4代目ランサーの出番だ。
ランサーGSRのみ搭載されていた、4G93型と呼ばれる1.8Lのツインカムユニットは、最高出力200psに接近。新開発のマルチリンク式リア・サスペンションを採用し、高次元のコーナリングとトラクションを実現していた。
250psの4G63型で始まったランエボ
しかし三菱の経営陣は、GSRよりさらに上を考えていた。ついに、ランサー・エボリューションが誕生する。
ランエボIのアルミニウム製ボンネットの内側には、250psの4G63型2.0L直列4気筒ターボを搭載。軽量なクランクシャフトを採用するなど、多くの改良が加えられていた。
トランスミッションはクロスレシオで、ベンチレーテッド・ディスクと2ポッド・キャリパーを採用するブレーキには、四輪にABSも装備。レカロ製バケットシートがドライバーをサポートする。
前後のアンチロールバーは強化品へ置き換わっていたが、サスペンションはソフト志向。ランサーを際立たせる足まわりだった。
RSエボリューション仕様では、走行に不要な装備品を省くことで、70kgを軽量化。さらに機械式リミテッドスリップ・デフが組めた。
ところが三菱のお膝元の日本と違い、英国で選べた同時期の最もホットなランサーは、自然吸気のGTi。ケネス・エリクソンがラリーアートのワークスマシンとして、1993年に英国RACラリーに持ち込んだのが、ランエボ最初の1台となっている。
1994年にはより好戦的なスタイリングが与えられたエボリューションIIが登場。ターボブーストを高め、最高出力は10ps増しの260psを獲得。さらにランエボIIIでは、270psにまでパワーアップしている。