【WRCとともに歩んだ進化】三菱ランサー・エボリューションVI TMEとX FQ440 MR 後編

公開 : 2021.02.13 17:45  更新 : 2022.11.01 08:57

デザインへの意識が薄いインテリア

かつて三菱のワークスチームを率いていたラリーアートも、ターゲット市場では大きな意味を持たなかったため、意図的に表に出ることはなかったようだ。今は、バンパーのステッカーに残るのみ。活用する方法もあったと思うのだが。

インテリアでも、ランエボVIとXとの違いは共通している。同時に、デザインに対する関心の薄さも、共通している。

三菱ランサー・エボリューションVI トミ・マキネン・エディションとランサー・エボリューションX FQ440 MR
三菱ランサー・エボリューションVI トミ・マキネン・エディションとランサー・エボリューションX FQ440 MR

ランエボVIの車内には、特徴がない。色あせた赤のように見えるオレンジ色で目盛りが付いたメーター類が、プレーンな黒いプラスティック製パネルに覆われた車内で唯一の彩り。レブカウンターは逆回転になっている。

強く興味を引くものといえば、インタークーラーのスプレーボタン。ドライバーの子供心をくすぐってくる。手を伸ばさずにはいられない。

赤と黒の2トーンで仕立てられたレカロシートには、トミ・マキネン・エディションであることが記される。ラリーアートのステッカーも、特別なクルマであることを示すために最善は尽くしているのだろう。

一方のランエボXの車内は、小柄なサルーンとしては広い。ウエストラインが高く、少し閉じ込められたような感じもする。ボーイズレーサーたちが好むと好まずとに関わらず、着座位置は充分に低い。

ランエボVIの4G63型エンジンを始動するが、ドラマ性は小さい。一方のランエボXの4B11型ユニットの方がサウンドは大きく、主張も強い。

対象的なランエボVIとXの運転体験

3000rpm以下では低音域が中心だが、回転の上昇とともに高音域へ移っていく。回転数が充分に高くないと、選択したギアが適切でなかったかのように、クルマ全体がガタガタと振動する。

レブカウンターで確認しても、問題はないようだ。容赦なく、気持ち良いものではない。だが、回転数が高まればパフォーマンスは桁外れ。丘陵で草をはむ羊を驚かせ、ワープするように周囲をぼかしながら、低木で覆われた坂道をランエボXが駆けていく。

三菱ランサー・エボリューションX FQ440 MR(2015年)
三菱ランサー・エボリューションX FQ440 MR(2015年)

スポーツ・モードを選んで、アクセルペダルを踏み込めば、背中はシートへ押し付けられる。それ以外では不自然にダルで、デュアルクラッチATの反応も良くはない。

シフトパドルは、ステアリングコラムに付いている。直線を突き進みながら変速する、という前提なのかもしれない。

一方、ランエボVIはマニュアル。メカニカルな印象が強く、適切な変速が求められる。だが極めて落ち着きがありグリップ力も高く、とても運転しやすい。

アクティブ・ヨーコントロール以外、電子的な制御も入らない。ランエボXとは異なり、純粋にドライビング体験が味わえる。乗り心地は柔軟で、しなやかに流れるように路面をいなす。車高もわずかに高く、フィーリングも良い。

ランエボXのFQ440 MRには、硬いアイバッハ製スプリングが装備されている。すべての路面の凹凸を、そのまま振動で伝えてくる。ドライバーには、あまり優しくない。

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