【モデル後期でも訴求力は維持】メルセデス・ベンツGLC 300eへ試乗 319psのPHEV
公開 : 2021.02.04 10:25 更新 : 2021.07.27 14:51
滑らかさやレスポンスでライバルに及ばず
GLC 300eで走り出してみよう。バッテリーの充電量に不足がなければ、市街地程度の速度域なら基本的に電気モーターだけで走れる。ほかのPHEVと同様に。
エンジンで走るときより静かだが、加速時は9速ATの変速が生じる。ライバルほど滑らかだったり、レスポンスが良いというわけではない。
変速に気付かない、という人はいるかもしれない。だが、純EVのようにシームレスでリニアに加速する純EVモードを体験したことがあれば、気付かずにはいられない。
電気モーターの動的性能に不足はない。発進時に鋭いと感じることはないにしろ、遅れを感じることもないはずだ。
アクセルペダルを踏み込めば、ガソリンエンジンが始動。右足の操作に対し、若干の遅れを伴ってGLCは反応する。一度目覚めてしまえば、2.0Lエンジンは静かで滑らか。駆動用バッテリーが空になっても、充分なパワーを提供してくれる。
高負荷時でも4気筒エンジンの質感は洗練されたままで、ノイズはわずかに聞こえてくる程度。エンジンルーム内で共鳴したり、不快な振動を発することもない。ただし、システム総合で319psや71.2kg-mもあるとは、実感しにくい。
高速道路の追い越し車線で素早くダッシュを済ませたいときなどは、9速ATは低めの段数を選んでいた方が、期待通りの反応が得られるだろう。実際、そうすればかなり活発に加速してくれる。
スポーツサスでも優れた乗り心地
もっとも、そんな走りかたをすればPHEVの強みとなる燃費効率は得られない。EVモードでの航続距離も、試乗時の条件では伸びなかった。試乗した気温12度の冬場で示された距離は、27kmだけだ。
確かに27km程度走れたが、多くのPHEVのライバルの方が航続距離は長い。燃費も同様。英国の高速道路の一般的なペースに合わせて走行しても、11.3km/Lから12.4km/L程度。PHEVの期待には届いていない。
英国のPHEV版GLCの場合はAMGラインに限定され、スポーティなスチールコイルのサスペンションが組まれる。セルフレベリング機能付きのエアサスは、この300eに付いていない。ドライバーが設定を切り替えられる、アダプティブ・システムでもない。
スポーツサスペンションを備えていても、GLCは快適重視のSUVの1つ。PHEVの搭載により車重が増えているものの、動的性能でのマイナスは、限定的に思えた。
都市部の路面では、優れた姿勢制御と柔軟性を備え、快適な乗り心地に保ってくれる。試乗車は20インチのアルミホイールを履いていたためか、隆起部分では強めの衝撃が車内へ届く場面はあった。
ホイールサイズが大きいと、燃費や航続距離に影響が出る。本当に高性能なSUVが必要でないなら、トリムグレードはAMGラインである必要はないし、ホイールは19インチの方が良いだろう。
郊外の道へ足を伸ばすと、変化の大きい路面では、減衰力不足のような振る舞いが感取されることもあった。ステアリングホイールは程々に軽く、レシオもクイックではなく、感触は乏しい。ドライバーを強く引きつけるほどではない。