【ハイラックスも】トヨタの功労者「IMV」とは? 販売台数世界一を支える

公開 : 2021.02.03 05:45

「タフさ」が売りの3兄弟

「IMVシリーズ」から生まれた「ハイラックス」、「フォーチュナー」、「イノーバ」の3モデルは、基本メカニズムを共通化している。

ラダーフレームを利用したFRレイアウトを基本とし、2WDと4WDを用意する。そのため、3モデルともタフであることが特徴だ。

トヨタ・イノーバ・クリスタ
トヨタ・イノーバ・クリスタ    トヨタ・モーター・インドネシア

この3モデルは海外市場向けモデルということもあり、海外、とくにアセアン地域での存在感は非常に大きい。

「ハイラックス」はタイなどのベストセラーであるし、「イノーバ」はインドネシアでの大ヒットモデルだ。また、「フォーチュナー」は、高級SUVとしてみられている。トヨタの本格SUVといえば「ランドクルーザー」が存在するが、アセアンでは、より身近な高級SUVとして「フォーチュナー」の人気が高い。

人気の理由の1つが「とにかくタフ、壊れない」ということだ。

まだまだクルマが庶民にとって超高級品である地域で、クルマが壊れないということは非常に大きな価値になる。修理費がかからないというだけでなく、使い倒したあとであっても高く売れる。

インドネシアで10万km走行した「イノーバ」が、ほとんど買った値段と変わらない値段で中古車として売れたという話を筆者は聞いたことがある。中古車として高く売れるのであれば、損をしない。これもトヨタ車の人気の高い理由だ。

ちなみに「ハイラックス」の初代誕生は1968年であり、「IMVプロジェクト」のはるか前から海外で人気を集めていた。しかし、2004年にデビューした第7世代から「IMVシリーズ」の1台として歩むことになった。

また、「ハイラックス・サーフ」は、「ハイラックス」の派生モデルであったが、2002年からはランドクルーザー・プラドのメカニズムを使うようになり、「ハイラックス」とは別の道を歩むことになる。

北米では「4ランナー」の名称で販売されていた。また、インドネシアでは「イノーバ」の前進となる「キジャン」という人気ミニバンが存在しており、これも「ハイラックス」と同様に「IMVプロジェクト」に加えられ、新たに「イノーバ」という名称が与えられている。

「IMVシリーズ」の販売成績

「IMVシリーズ」の3モデルは、2004年のデビュー直後から大ヒットモデルとなる。

具体的にどれだけ売れたのかといえば、まず目標であった年間50万台は、わずか数年でクリア。そして2010年には年間の販売台数は80万台を突破。2012年には、累計販売台数500万台を達成してしまうのだ。

トヨタ・イノーバ・クリスタ
トヨタ・イノーバ・クリスタ    トヨタ・モーター・インドネシア

年間80万台といえば、スバル三菱自動車、マツダの調子の悪いときの年間販売台数に匹敵する数字。つまり、「IMVシリーズ」だけで、1つの自動車メーカー並みのボリュームとなる。

また、2015年には「IMVシリーズ」がフルモデルチェンジを実施。「ハイラックス」は第8世代、「フォーチュナー」と「イノーバ」は第2世代となった。

もちろん人気は依然として高いままで、現在の「IMVシリーズ」の3モデルの販売台数は2019年で約89万3000台、コロナ禍の2020年でも約67万4000台と、安定した数字をたたき出す。

世界一の販売台数をうかがうトヨタにとって、大きな力の1つとなっている。

この「IMVシリーズ」の誕生から大ヒットの時代は、ちょうどトヨタが海外販売を大きく伸ばした時期と重なる。逆にいえば「世界一のトヨタ」になるための成長を支える大きく貢献したのが「IMVシリーズ」であった。

また、「IMV」がターゲットとする新興市場は、まだまだ伸びしろが大きい。

アセアンの人口は約6億人、南米で約4億人。2つをあわせるだけで中国と同じだけの規模になる。しかも、これらの地域の経済成長はこれから。トヨタは「IMVシリーズ」によって、そうした成長市場を押さえているのだ。

ハイブリッドやFCVのような最先端技術だけでなく、生活に密着した泥臭いクルマも得意とする。それがトヨタの底力なのだ。

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