【手頃なEVのベストチョイスは?】マツダかミニか 各ブランドの性格が顕著 短所は大差なし

公開 : 2021.01.30 20:59

GT的なマツダとスポーティなミニ

航続距離は残念な要素だが、少なくとも走らせてみれば、好材料も見つけられる。結局、MX-30の魅力を高めるのは、ミニを上回りそうな運動性だ。これならば驚くほど洞察力があり、マツダ信者というわけではないマツダ車オーナーにもアピールできる。

近くで見ると、20年くらい前のすましたコンセプトカーを思わせる。われわれが思い出したのは、フォード021Cやダッジ・カフナだ。そんなマイナーなショーモデルをご記憶の読者は少ないだろうが、MX-30のシリンダー風ライトや厚ぼったいクラッディング、複雑さを排したボディラインなどは、ミニカーを原寸大に拡大したようなテイストを漂わせる。

かたや高級GT的、かたや小さなロケットのよう。どちらがどちらなのかは、説明せずとも乗ればわかるだろう。
かたや高級GT的、かたや小さなロケットのよう。どちらがどちらなのかは、説明せずとも乗ればわかるだろう。    OLGUN KORDAL

キャビンには、冒険的なところはあまりない。観音開きドアや、自社のルーツをたどるように採用したコルクのトリムくらいだ(そう、1920年に東洋コルク工業として発足したマツダは、プジョーと同じくまったくの異業種から転身した自動車メーカーだ)。

運転環境は退屈にも思える昔ながらのエルゴノミクスだが、今となってはそれがむしろ目新しい。それらはまちがいなくいい出来だが、ベースとなるエンジン車から多くを流用していることがその大きな理由だ。

マツダの場合、変更可能な走行モードは用意されず、使い方に迷うようなギミックもない。室内にさまざまな電子音が響き渡り、蛍光色のアクセントや奇妙なディスプレイを備えるミニと違って、マツダのインテリアはトラディッショナルだ。ただし、メーターパネルは左右対象ではなく、解像度が粗いことに驚かされるが。

リムの細いステアリングホイールは、MX-5からの流用かと思わせるもの。メーターはデジタルだが、アナログ調のデザインだ。ファブリックのシートは、モダン家具のカタログに載っていそうな見栄えだが、サポート性に優れ、快適でスポーティだ。

いっぽうのミニは、より身体を包み込むようなシートで、着座位置がうれしいくらい低く、視線がスカットルをかすめるような感覚だ。かたや高級GT的、かたや小さなロケットのよう、とたとえても、どちらがどちらか、すぐにわかるだろう。

とにかくダイレクトなミニ

同じような違いは、ドライビングにも当てはまる。走りは単調なものが多いEVの中にあっては、2台とも並外れたよさをみせる。それは期待通りだ。しかし、どちらもEVとしてはすばらしいニュートラルなバランスを備えているとはいっても、走らせてみるとまったくの別物だ。

184psのミニは、ガソリン車のクーパーSより140kgほど重いが重心は低く、明らかに素早さで上回る。パワートレインもハンドリングも、レスポンスはよりクリーンだ。

ミニはボディの挙動が小さく、操作へのレスポンスがダイレクト。MX−30は、それより重厚な感覚がある。
ミニはボディの挙動が小さく、操作へのレスポンスがダイレクト。MX−30は、それより重厚な感覚がある。    OLGUN KORDAL

どちらも予想通り、乗り心地は滑らか。スプリングレートが、重いバッテリーに対応するべく高められているはずなのだが。ただしミニは、ロールが最小限に抑えられ、グリップレベルは掛け値なしにみごとだ。重量バランスも優れているので、スロットルやステアリングの入力のひとつひとつに対して即応する感覚がある。

ヤンチャなところは、それほどみられない。ただただ強烈にダイレクトで、ゾクゾクするほどだ。脳髄を直撃するような刺激が、いきなりやってきて、いつまでも神経にその感覚が残る。ブラボー、ミニ!

反対に、27.5kg-mのトルクはミニと肩を並べるMX-30は、やや重々しさがある。テストしたのが先行量産車だったこともあるかもしれないが。しかし、本当に速いエンジン車にもそういうところはあるものだ。

ブレーキに関しては、マツダはミニのようなフィールやコンフィデンスをもたらしてはくれなかった。また、効きはじめまでの踏み込み量が多い。そして、ドライビングポジションが高いので当然ながら、ゆったり走るにはとても適しているが、ドライビングの満足感を求めるには向いていない。

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