【難解か否や?】フランスの高級車とは EVまで揃った「DS」の今 イッキ乗りしてみた
公開 : 2021.01.31 19:45 更新 : 2021.10.09 23:31
光って見える? そんな馬鹿な!
内装でも留意すべきは、外装のクローム使いと同じく「光らせ方」だ。
基本的に、間接光でぼんやりと浮かぶように光らせるのが、フランスのハイエンドひいてはDSの好む方向。
パティスリー好きの人には釈迦に説法となるが、エフェ・タミゼといって、単なる艶消しマットの表面でなく、ココアパウダーやアイシングシュガーを網を通してふりかけたような質感が、見た目に優しく触ってみたくもなる、そういう効果で内装全体が統一されているのだ。
いわばDSを構成するディティールは、じつはキラキラ目的ではなく、表面上はそう見えるものばかり、ということ。
例えばセンターコンソール上、スイッチ周りの「ギョシェ彫り」は、18世紀にブレゲが懐中時計の文字盤に用いた際は、反射防止の加工だった。
つまり「キラキラ光って見える」のは、知識がなければ相対的にそう見える、という話で、細かな凹凸の突起は、ウインドウスイッチを探り当てる触覚上の手がかりとして丁度いい。
他にも地味ハデなディティールとして、パール・ステッチとパティ―ヌ・レザーがある。
改めた乗ったICE版のサプライズ
前者(パール・ステッチ)は、明色ステッチが線でなく粒になって素材を縫い合わせるがゆえ、逆に光って見えるという。
後者(パティ―ヌ・レザー)は紳士靴でおなじみ、ダメージ加工ではなくトーン重ねで素材感と奥行を出す。これらもキラキラさせたくてやっている訳でなく、結果そう見える人もいるという話なのだ。うーん、いけず。
とまぁ、静的質感で好悪が分かれることは否定しない。よい趣味とは悪趣味にはつねに目ざわりなものだし、その逆も然りなのだから。
今回の試乗車はDS 3クロスバックもDS 7クロスバックもICE版が「オペラ」、前者のEテンスが「リヴォリ」という内装。いずれも実在の地名だが、現地を訪れるとか知っておく必要は別になく、ミニでいうメイフェアやケンジントンと同じと思えばいい。
3台のうち、個人的にベスト・サプライズは、年次改良で練り上げられたであろうDS 3クロスバックのICE版だった。
横浜の市街地で、アイドリングストップと再始動の境目をほとんど感じさせない。
直3のFFなのに、それほど振動がなく静粛性が高いのだ。
1.2Lターボの130ps仕様は、それこそお手本のようなダウンサイジングターボ。ハミングのように軽快な音とフィールで、唸らせずとも力強い。Bセグながら前席がアコースティックガラスで二重に外界と仕切られていたり、フロントサスに軽量高剛性のアルミ平断面アームを用いるがゆえの効果だろう