【業界の重役に訊く】2021年は電気自動車の年になる? 欧州市場の転換点
公開 : 2021.02.02 19:05
EV需要が急速に高まる欧州市場。インフラ整備やクルマに対する価値観について、業界の重役に話を聞きました。
現実的な選択肢になりつつあるEV
今年は英国の新車市場の転換点となる可能性がある。EVが単なる目玉商品ではなくなり、多くの人々にとって現実的な交通手段となるかもしれない。
それは自動車産業と消費者にとって、何を意味するのだろうか?
AUTOCARはステランティスの上級副社長であり、プジョー、シトロエン、DSの英国部門の責任者であるアリソン・ジョーンズと、フォードの元最高技術責任者であり、自動車評議会の元会長でもあるリチャード・パリー=ジョーンズに話を聞き、この疑問などに答えてもらった。
EVの総所有コストに対する価値観
1つはっきりしていることは、EVは自動車の技術だけでなく、自動車にかかるコストに対する価値観をも変えているということだ。
アリソン・ジョーンズは、販売価格だけではなく、ICE車と比較してEVの総所有コストを考慮するように消費者に認識させる必要があると考えている。
アリソン・ジョーンズ
「顧客にとって、新しいEVに支払う価格だけが考慮事項ではありません。航続距離の不安や充電インフラ、充電できる場所など、クルマによる違いがあるため、EVへの乗り換えは利用面でも大きな一歩だと考えているのです」
「だからこそ、プラグイン・ハイブリッドは素晴らしいステップなのです。電気だけで50~60km走れるクルマです。低排出ガス車での生活に対する不安は、PHEVで克服できます」
「PHEVは、クルマを1台しか所有していない家庭にとってある程度の安心感を与えてくれるし、排出ガス削減にも貢献しています」
2030年にはICE車に価値はあるのか?
英国では2030年にICE(ガソリン・ディーゼル)車の新車販売が禁止される。以降、ICE車の価値はどうなってしまうのだろうか。
アリソン・ジョーンズ
「少し混沌としたものになると思います。だからこそ、低排出ガス車への課税がどうなるのかという確実性が必要で、『これが社会全体に起こりうる風景だ』と言えるようにしなければなりません」
「誰もがEVに乗り換えたいと思うわけではないし、乗り換えられるわけでもないので、ICE車の価値は維持しなければなりません。わたし達は、残存価値の確実性と、それがどのように動くのかを示す明確な道筋を必要としています」
パリー・ジョーンズ
「(価値について)推測することはできますが、都市の空気の質についてはまだあまり話されていません。EVの導入を加速させようとする政府の関心と熱意は、2つの力によって動かされています。CO2排出量と都市の空気の質です」
「個人的には、ディーゼル車やガソリン車の残存価値は、CO2の排出量よりも空気の質に大きく左右されると思っています。今後、ICE車の価値を確保する最善の方法は、排出ガスの清浄度を上げることです」
「都市部と地方では、ICE車の需要に違いが出てくると思います。都市部では、税金や渋滞対策などにより購入することができませんが、大気質への懸念が低い地方では、非常に高い需要があるでしょう。将来的には地域分離が進むと考えられます」