【ドライバーズカーの模範解答】BMW 2002と3.0 CSL 本質を映すクーペ 後編

公開 : 2021.02.20 17:45  更新 : 2021.05.18 16:19

美しいと感じるほどにスムーズな6気筒

ドライビングポジションは、2002より3.0 CSLの方が良い。少しペースを速めてみると、バケットシートの素晴らしさにも気づく。

ドライバーの正面には、2002の3丸ではなく、4丸のメーターが並ぶ。ダッシュボードにはウッドパネルが用いられ、クロームメッキがあしらわれる。2002のプラスティック主体の車内とは異なり、手作業で仕上げられた高価なクルマだと伺わせる部分だ。

BMW 3.0 CSL(1971〜1974年)
BMW 3.0 CSL(1971〜1974年)

ペダルのポジションやスイッチ類のレイアウトは、2002と近似。全長は3.0 CSLの方が300mm以上長いが、リアシートの足元空間はさほど広いわけではない。

3.0 CSLのマシン加工された特徴的なキーと、少々うるさく動きの鈍いパワーウインドウは、E9型クーペで共通。燃料ポンプが回転し高圧のインジェクションが働くと、即座に直列6気筒が目を覚ます。

回転は美しいと感じるほどにスムーズ。フレキシブルでもあり、3.0 CSLに躍動的な加速力を与える。スタートダッシュを気張るとリア・スプリングが縮み、テイクオフ・スタイルを取る。

1速で引っ張れば64km/hに届き、2速で112km/h、3速で160km/hを超える。タコメーターの針が変速の度に急回転し、情熱的にパワーが生み出される。5500rpm以上では馬力が減少していくはずだが、力強さは増していくように感じる。

加速と同時に放たれる威厳ある咆哮が気持ちを高ぶらせ、4速MTを積極的に操りたくなる。2002と同じくらいシフトフィールは滑らか。だが変速を急ぐと、シンクロが機能しない場面もあるようだ。

1970年代初頭のクリエイティブな時期

ドーナツのように膨らんだタイヤは、ミシュランXWX。路面をひたひたと掴んでくれる。現代水準でいえば、3.0 CSLは全幅も狭くコンパクトな部類に入る。50年前のクルマでも、不安感なく操れる。

走りは非常に安定していて、洗練されている。フレームレス・ウインドウから、大きく風切り音が聞こえてくること以外は。

白のBMW 3.0 CSLとオレンジのBMW 2002
白のBMW 3.0 CSLとオレンジのBMW 2002

乗り心地は引き締まっているが、ガタガタと揺さぶられるほどではない。きれいに小気味よく、フロントノーズは向きを変えていく。

長く伸びる高速コーナーでは、狙い通りのラインを見事にキープできる。低速コーナーからの立ち上がりでは、リミテッドスリップ・デフの機能も実感できる。

3.0 CSLには、パワーステアリングが付いている。それでも、完璧なサイズのステアリングホイールを握る指先を通じて、滑らかな感触が伝わってくる。

BMW 2002が牽引した、1970年代初頭に訪れたBMWのクリエイティブな時期。3.0 CSLは、その絶頂期を飾り、エンディングを彩った。その残光は今も眩しい。

ミュンヘンから生まれた、代表的な2台のスポーツクーペ。まだ過小評価されていたBMWの実力を定義する、完璧な模範解答だった。その本質は、今のBMWへと受け継がれているものだといえる。

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