【詳細データテスト】マクラーレンGT 融通の効くパワートレイン 鋭いハンドリング 遮音性が最大の弱点
公開 : 2021.02.06 20:25
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
パワートレインはGTカー的にマイルドな仕立てとなっていても、やはりミドシップらしいキレのあるピュアなハンドリングはこのクルマの売りだ。
一般的に、ゆったり流す高級クルーザーであれば、これほど精確で俊敏に、かつしなやかにワインディングを駆け抜けることはない。また、これほどはっきりとステアリングのフィードバックが手のひらに伝わってくることもない。
GTに備わる3段階の走行モードはマクラーレンにつきもののそれだが、油圧パワーステアリングのセッティングは、実のところひとつのポジションしかない。開発エンジニアたちは、ミッションをシンプルにすることで、理想的な手応えと切れの速さとの折衷を成し遂げた。
低速域でも一貫した重さは、マニューバリングを容易にし、ギア比は速すぎず遅すぎず、いつもながらよく見極められている。疲労の原因になるような路面の反りやバンプの影響を多少は取り除いているが、それでも伝わってくるインフォメーションは豊富だ。そのため、速度を上げても、グリップレベルを明確に把握することができる。
サスペンションはソフトだとされるが、通常のスピードでのコーナリングではほぼロールせず、ステアリング入力への反応は歯切れよく、外輪はしっかり踏ん張る。
上下のボディコントロールは一貫してきっちりと落ち着いているというわけではないが、コーナリング中に障害があってもひどく取り乱すことはない。そのため、常に思い通りのラインを走らせることができ、飛ばしていてもくつろいで乗っていられる。
引き換えに、これまでのマクラーレンが示してきたターンインの刃の如き鋭さやダイレクトさはやや削がれた。それでも、十分にみごとなものだが。
高速ハンドリングにおけるスタビリティは良好だが、追い越し車線をいかに落ち着いて走れるかは、選んだ走行モードに多少ながら左右される。
コンフォートモードでは、波長の長いボディの挙動にやや影響を受けがちだと感じられたが、スポーツモードでは揺れが止まるものの、プライマリーライドに好ましくない影響が出てしまう。
どちらのセッティングでも、このクルマに期待される安楽でなめらかな身のこなしや、高速域でのプログレッシブに遷移するボディコントロールを、完璧に実現することはできなかった。