【相次ぐ減産発表】半導体不足でクルマがつくれない理由 今後どうなる?
公開 : 2021.02.08 05:45 更新 : 2021.02.09 22:00
大型旅客機よりも多いプログラムコード
半導体とクルマとの技術的な関係について、車載半導体大手の独インフィニオンが2020年12月半ばに開催した、報道陣とのオンライン・ワークショップでの話題。その一部の引用になるが、クルマには車外との通信をおこなうため登録者を特定するSIMカード(サブスクライバー・アイデンティフィケーション・モジュール)が搭載されており、こうしたコネクテッドカーが当たり前の時代となっている。
車載マイコンなどによるソフトウエアのプログラムコードは、戦闘機の170万行、大型旅客機の650万行と比べてはるかに多い1億行に達している。自動運転やMaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)という技術的なトレンドによって、クルマのIT化が加速している、と指摘した。
また「マイクロコンピューターは小型コンピュータで、1つの半導体IC(インテグレーテッド・サーキット:集積回路)にCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット:中央演算処理装置)と記憶装置であるRAMとFlashメモリーを内蔵」とあらためて説明。
さらに、車載マイクロコンピュータは「CAN(コントローラー・エリア・ネットワーク)により相互連携している」と説明した。
このように、半導体は近年の自動車において、なくてはならない存在であり、半導体不足が自動車生産の減産につながるのは当然だといえる。
今後、車載半導体の数は減少?
筆者がインフィニオン関係者に対して、より効果的なサイバーセキュリティ対策について聞いたところ、マイコンの数を減らし、車載ソフトウエアを統括的に見るシステム化が大手部品メーカー(いわゆるティア1)での主流な考え方となる傾向があり、そうなると結果的に車載半導体の数は減少する可能性が高いと指摘した。
インフィニオン以外の半導体メーカーの動向についても、筆者はインテル本社など各社関係者とこれまで直接、意見交換してきたが、半導体メーカーの自動車産業界との関わりが大きく変わろうとしていると感じる。
それは、半導体というハードウエアやソフトウエアの設計から、半導体メーカー側に集積された移動データなどユーザーデータを活用化するビジネスモデルへの転換だ。
自動車産業界において、半導体メーカーはいわゆるティア2で、納入先はボッシュ、コンチネンタル、デンソーなどティア1だ。こうした垂直統合的なサプライチェーンが、データビジネスという観点で大きく変わろうとしている。
今回の車載半導体の供給不足問題は、コロナ禍でのティア1の生産予測の見誤り、という観点だけではなく、サプライチェーンのあり方そのものに対する課題を浮き彫りにするとともに、新たな時代の胎動を感じさせる出来事といえる。