【2トーンカラーが安くなる?】最新の塗装用ロボット「PixelPaint」登場 ABB社 まるでインクジェットプリンター
公開 : 2021.02.09 06:25 更新 : 2021.02.09 10:05
産業用ロボットメーカーABBが最新の塗装ロボットを開発。自動車塗装のコスト削減につながるとされています。
きめ細かいスプレーで無駄を減らす
過去10年間で、新車のカスタマイズはほぼ当たり前のこととなり、その傾向は衰える気配を見せていない。多くのメーカーでは、色違いのルーフパネルやビニールデカール、クラッディングなどのオプションを用意して、視覚的なドラマを演出している。
パネルの色を変えて塗装したり、ビニールデカールを貼ったりする場合の問題点は、製造にかかる時間が増えることだ。産業用ロボットメーカーのABBは、塗装に必要なコストと時間を削減できる最新ロボットを開発した。
一般的に、ルーフパネルを異なる色に塗装するためには、ボディをスプレーブースで1回通過させ、下半分をマスキングしてから、もう1回通過させて2色目を塗らなければならない。通常、この作業には、マスキングを行ったり除去したりする作業員が必要となる。
しかし、産業界の巨人ABBは、セカンドカラーを簡単に塗装できるだけでなく、ビニールラップしか再現できないような繊細なグラフィックも可能にする新技術を開発した。「PixelPaint」と呼ばれるこの新しいロボット技術は、自動車生産ラインの塗装にインクジェットプリンターのような柔軟性をもたらす。
PixelPaintロボットは、既存の塗装用ロボットと同様にスプレーヘッドを装備している。違いはヘッドのディテールにある。従来の噴霧ノズルではなく、1000個のノズルを備えたプリンティングヘッドを搭載しているのだ。
これにより、1秒間に1000個の液滴を塗布することができるようになる。液滴のサイズは20~50ミクロンで制御でき、これは人間の血液細胞2個分に相当する。
塗料の2~3割は捨てられていた
クルマのスプレーで最も厄介なのは、必要のないところに塗料が付着してしまうオーバースプレーだ。これは通常、ガンから噴射された霧状の塗料が何にでも付着してしまうことが原因の1つだ。
オーバースプレーは、スプレーの性質が不正確であることと、塗装表面で塗料が跳ね返ってしまうことに起因する。塗料の粒子が帯電している静電塗装は、これを助け、塗料の分布をより均一にする。しかし、一般的に塗料の70~80%はクルマに付着し、残りはフィルターに回収されて廃棄物となってしまう。
ABBのPixelPaintでは、塗料の100%がクルマに付着するとされている。
PixelPaintには、塗装工程をプログラミングするためのソフトウェアパッケージが付属している。あらかじめデザインされた画像をロボットに送信するのは、家庭用コンピューターを使ってデスクトッププリンターから印刷するのと似たようなプロセスだ。レタリングから数字、派手なグラフィックまで、単色の画像であれば何でも可能だ。
ABBは、PixelPaintにより塗料の無駄を減らすことで、リサイクル費用や塗料代などを削減できるとしている。
削減されたコストは必然的に自動車メーカーの懐に入ることになるが、理論的には、メーカーが提供するカスタマイズの幅が広がり、価格もリーズナブルになるはずだ。
PixelPaintの詳細は、9月15日に上海で開催される中国国際工業博覧会(CIIF)で発表される予定だ。