【BMW初のFFホットハッチ】BMW 1シリーズ 128tiへ試乗 血統感じる楽しさ 後編
公開 : 2021.02.16 19:05
快適性重視のBMW 1シリーズから、前輪駆動のホットハッチが誕生。メガーヌR.S.やゴルフGTIを脅かす存在となるのか、英国編集部が評価しました。
ライバルを霞ませる完成度のインテリア
BMW 128tiのシートの雰囲気は、1980年代のものを彷彿とさせる。快適性やサポート性はクラストップで良い。人間工学や知覚品質なども含めて、ホットハッチのライバルと比べてもベストといえる完成度たと思う。
BMWのiドライブは、いまもソリッドな質感のコントローラーを残している。レザー製のエアバックカバーに、上質なプラスティック製部品や赤いステッチなどは、ライバルの車内をみすぼらしく感じさせるほど。
ゴルフGTIのインテリアも、並ぶことはできない。しかも128tiは、通常の1シリーズとは異なるシンプルなアナログ風メーターパネルを採用してもいる。モニター式ではあるが、とても見やすい。
128tiには懐かしいシフトノブは付かない。トランスミッションは、アイシン社製の8速ATが組み合わされている。MTは環境規制に対し不利で、ドライバーに選ばれる割合も小さいとBMWが考えているためだ。
本物のホットハッチといいながら、MTは選べない。どれだけ本物なのか、少し疑問に思うドライバーもいるだろう。しかし心配は不要。大部分で本物だと感じた。
BMWはアダプティブではない、通常のダンパーを標準装備としている。ワインディングで足まわりが柔らかいと感じても、シャシーを引き締めるボタンはない。高速道路で硬すぎると感じても、柔らかくはできない。
しかし幸運にも、サスペンションのバランスは秀逸。低速域では体に響く衝撃が届く場合もあるが、速度域が上がりダンパーがちゃんと仕事をし始めれば、128tiは柔軟さを感じるほどに滑らかに走り始める。
バランスの良い足腰にパワフルなエンジン
ホットハッチに望む快適性と操縦性との、見事なブレンドに仕立ててある。必要以上のボディロールを生じない程度に硬く、管理の悪い舗装に対応するしなやかさもある。路面のうねりに緊張することなく、毎日乗れる落ち着きも備えている。
見直しされたステアリングも、優れた操縦性を引き立てている。コンフォート・モードなら丁度いい手応えがあり、ゴルフGTIより重み付けはいい。ただし、スポーツ・モードでは、少し人工的な印象を受けた。
メガーヌR.S.ほど積極的なレシオではないが、小気味よくフロントを振り回せる。ボディがひと回り小さく感じるほどタイトな精度を、128tiに与えている。ホットハッチでもボディは拡大傾向だから、コンパクトに感じさせるハンドリングを高く評価したい。
2.0L 4気筒エンジンは、心が引き込まれることはないにしろ、たくましい。B48型と呼ばれるユニットで、回転域を問わずパワフル。少しターボラグを感じるが、2000rpm前後からみなぎる加速力を与えてくれる。
トランスミッションとの相性も抜群に良い。スポーツ・モードを選ぶと力強さが高まり、キビキビとした変速が気持ちいい。ただし、気持ちが高ぶるほどではない。
ステアリングも乗り心地も、エンジンも、すべてが良い。128tiならではの、ハンドリングを輝かせる素地は整っている。しかし完全に狙い通り、というわけでもないようだ。やや湿った路面では、操縦性の懐の深さを充分には実感できなかった。