【なぜ売れない?】中古スーパーカー 欧州で価格下落続く メーカーと社会状況に原因
公開 : 2021.02.09 18:05
今、派手すぎるクルマは売れない
サーキット走行に特化したクルマのオーナーにとっても朗報は少ない。AUTOCARが話を聞いたディーラーやコレクターの中には、ポルシェ911 GT3やGT3 RSの価値が著しく低下しているため、買い替えを提案する人もいた。
2020年はサーキットに行きづらくなっているため、サーキット走行に特化したクルマの価値が下がっているというのがコンセンサスだ。
また、このような現状に起因する社会的要因もある。「パンデミックのせいにするのは非常に簡単だと思います」とラベットは語る。
「30万ポンド(約4300万円)のクルマを運転している人は、おそらく多くの従業員を抱えたビジネスを営んでいて、時短勤務にしたり、解雇したりしなければならなかったかもしれないからです。従業員を解雇するなどした場合、フェラーリで走り回っていることを誇示するのは適切なのでしょうか?おそらくそうではありません」
そのため、それほど派手ではないが高価なモデルを求める買い手が出てきた。ブリストル近郊のウィリアムズ・オートモービルズ社のヘンリー・ウィリアムズによると、顧客の多くはスーパーカーを手放したか、少なくとも隠しているという。
ウィリアムズは、ロータスやケータハムと一緒にモーガンを販売している。それは、ポルシェやフェラーリのように贅沢ではないので、周りの人が反応する可能性が低いからだという。
彼が苦労しているのは、オーナーが下取りを希望するスーパーカーを、希望通りの価格で他のディーラーに引き取ってもらうことだ。昨年、多くのスーパーカーが市場に出回ったことが、状況をさらに悪化させているのではないかと推測している。
検索してみたところ、英国の大手中古車サイトで800台のフェラーリが見つかったが、その中には488ピスタが30台、F8トリビュートが19台、812スーパーファストが45台含まれていた。供給過剰が価格を押し上げることは滅多にない。
「アイコン」となるモデルに注目
SUVの普及もその一翼を担っていると、ムノスは言う。ほとんどのディーラーによると、SUVには確かに魅力が多く、かなり高い値段で取引されているという。
「信じられない」とこぼすのはハートリーだ。「最初に感じたのは、発売されたときには大きな打撃を受けるだろうということでしたが、ウルスは18か月前の個体であっても、十分な金額で取引されています」
これはすべて市場のリバランスと見ることもできる。しかし、富裕層の買い手は最新のハイエンドスーパーカーを手に入れることに執着しなくなってきていると言う人もいる。彼らにとっては、人生があまりにも速く、デジタル化しすぎているため、自分にとって何か意味のあるクルマや、気軽に楽しめるクルマを求めているのだ。
それが、1980年代の偉大なクルマのほか、アストン マーティン・シグネットのようなかつては酷評されたクルマの価格上昇の理由だろう。
ラベットは、希少なフェラーリ、ポルシェ、メルセデスを所有している裕福なコレクターが最近、街乗りを楽しむためにオークションサイトからフィアット・パンダ4×4を6000ポンド(86万円)で購入したと教えてくれた。
AUTOCARが話を聞いた人たちは皆、ある1点についてはっきりと同意した。簡単に利益を上げたがっている投機家やディーラーの時代は終わり、その代わりに、トヨタGRヤリスのような未来のアイコンに目を向けているということだ。
一方、コレクターにとっては一筋の光明が差している。車両価格分析会社キャップHPIの自動車評価担当エディターであるクライヴ・ウィルソンは、価格のさらなる軟化は見られるものの、スーパーカー市場は比較的堅調に推移するはずだと述べている。
「1年後の価格が今日よりも下がっていても、スーパーカーは他の中古市場を上回るパフォーマンスを発揮すると予想され、長期的には合理的に安定した市場につながると考えられます」