【ポルシェはRRかEVか】911カレラS vs タイカン4S 前編 動力性能と価格は同等
公開 : 2021.02.14 12:05
価格も性能も意外に近い
もうひとつ、この2台を選んだ理由がある。われわれテスターは、比較をする前に、ありかなしか、二進法的な考え方をしてしまいがちだ。しかし、購入者目線で考えると、そうはならない。最近、新車のレンジローバーと中古のマクラーレン、どちらを買うか決めかねているという話を聞いたばかりだ。
長年にわたる911信者でも、税金や家族の事情、環境問題や個人的なイメージ的なことを考えて、そろそろフラット6のRRクーペを捨て、もっと広く洗練された、環境に優しく、クールなEVに乗り換えるときではないかと考えるひとがいてもおかしくないはずだ。
価格とパフォーマンスは、とくにタイカン4Sに必須オプションともいえるパフォーマンスバッテリー・プラスを追加すると、そうかけ離れたものではなくなる。となれば、911とタイカンを横並びで考えても、それほど突飛ではない話になってくる。
911にデジタルは似合わない
まず乗り込んだのは911だ。というのも、世界屈指のスポーツクーペの、2021年時点における到達点を基準に据えてから、タイカンの評価に移りたかったからだ。
それは、基準点とするのにピッタリだった。いまやMTも選べるようになった992に、純粋主義車がケチをつけるとすれば、450psの3.0Lエンジンに2基のターボチャージャーが付いていることくらいだろう。
とはいえ、ターボラグはきわめて小さく、パワー特性はスムースだ。スロットルレスポンスはシャープで、サウンドもすばらしい。ふたつのタービンがドライビングの楽しみを大きく削ぐことはないといっていいだろう。
その影響は大きいという声もあるが、911ではそうとは感じられない。運転しやすい環境はそのまま受け継がれている。個人的に大きな不満を挙げるなら、ほぼデジタル化されたダッシュボードが、このクルマのキャラクターに合っていないということだけだ。
992世代の911には、さまざまなシチュエーションで十分すぎるほど乗っている。その考えが変わるようなことがあったならば、とっくに変わっているはずだ。タイカンにアナログメーターを並べるのと同じくらい、911のデジタル化は場違いに思える。