【コロナ禍でも高額落札】ル・マン優勝 マトラ・シムカMS670が、オークションに フランスの至宝に8億円

公開 : 2021.02.16 17:25  更新 : 2021.10.11 09:40

1972年ル・マン優勝車

マトラ・シムカのライバルだったフェラーリは4台の312PBを1972年のル・マンにエントリーしていたが、耐久性の問題から直前になって参加を取り止める。

そのためライバルといえたのがアルファ・ロメオT33だったが、その戦闘力は低かった。

678kgの車重に、3LのV12エンジン(456.9ps)を積む。モノコックはアルミ製で、そのうえにFRPカウルをまとう。
678kgの車重に、3LのV12エンジン(456.9ps)を積む。モノコックはアルミ製で、そのうえにFRPカウルをまとう。    Philippe Louzon/ARTCURIAL MOTORCARS

こうした中でスタートが切られたものの、ジャン-ピエール・ベルトワーズ/クリス・エイモン組のCN:670-03は2周目にエンジントラブルで早々にリタイアを喫す。

また、前年型のMS660は313周まで快走したが、クラッチを壊して戦列を離れてしまう。

生き残った2台のうち、アンリ・ペスカローロ/グレアム・ヒル組のMS670(CN:670-01)が独走して初優勝。

フランソワ・セベール/ハウデン・ガンレイ組のCN:670-02が2位に続き、マトラ・シムカは念願のル・マン優勝を1-2フィニッシュで飾った。

CN:670-01は1973年シーズンも改良が加えられて実戦投入され、ツェルトベクで優勝を勝ち取り、ル・マン、モンツァ、スパで3位に入るなど、マトラ・シムカのメイクス・チャンピオン獲得に貢献した。

パリに姿を現したCN:670-01

パリの冬を代表するクラシックカー・イベントとして親しまれている「レトロモビル」だが、今年はコロナ感染症の影響から6月に延期となった。そのためレトロモビル内で開かれる「レトロモビル・オークション」も延期されてしまう。

主催するアールキュリアルは、この日のために仕込んでいた車両を寝かしておくわけにもいかず、2月5日にパリのシャンゼリゼにある本社内で「パリジェンヌ・オークション」を開催することにした。

ランニング・コンディションのル・マン優勝マシンは、邦貨で8億円を超える落札となった。
ランニング・コンディションのル・マン優勝マシンは、邦貨で8億円を超える落札となった。    Philippe Louzon/ARTCURIAL MOTORCARS

フランスのオークションとあって、その主役は自国の至宝といえるマトラ・シムカMS670だった。それも1972年のル・マンで優勝したCN:670-01だけに、世界中から注目を集めることに。

事前の予想落札額は、400~750万ユーロ(約5億800~9億5250万円)と発表された。

フランスを始めとするヨーロッパ各国でコロナ禍により外出制限が続くうえ、経済の先行きが不透明なこともあり落札に否定的な声もあがっていた。

しかしオークションが始まると入札はヒートアップし、最終的に690.72万ユーロ(約8億7722万円)で決着がつく。1970年代の極みとなる1台とあって、ヒストリーを考えれば順当な額といえ、先頃のオークション・バブル期であれば確実に十億円を超えていたことだろう。

やはり極め付けのクルマは、景気が落ち込んでもちゃんと評価されることが証明された。

ランニング・コンディションにあるだけに、愛好家としてはル・マン・クラシックなどで「ジャーン」と響き渡る独特な12気筒サウンドを是非披露してもらいたいものだ。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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