【6速MTに911用キャリパー】ルノー5 ターボ2 25年の紆余曲折とレストア 後編

公開 : 2021.03.06 17:45

ブラッドリー家族が25年大切にしているルノー5 ターボ2。もう1家族の思いを込めた、完璧なレストアが施された1台をご紹介しましょう。

バラバラの状態だったターボ2

text:Jack Phillips(ジャック・フィリップス)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
メールでのやりとりを重ね、妹はヤンのルノー5 ターボ2をアレクサンドルだけに手放す決意をする。しかしサンドリーヌはベルーにいて、ルノー5はフランスにあり、ブラッドリーたちは英国に住んでいた。簡単にはことは運ばなかった。

アレクサンドルがクルマを見に行くと、バラバラの状態のターボ2があった。「フロントバンパーはありませんでした。ショックアブソーバーは2本だけ。古いエンジンは吹き飛んでいました。15年間、走らせないでいたようです」

ルノー5 ターボ2(1984年)
ルノー5 ターボ2(1984年)

「真新しいトランスミッションはありました。珍しい、6速のもの」。ヘレンが認める。「ちょっとショックでした」

「でも、素晴らしい場所でもありました。ターボ2を専門に扱うJCというガレージで、レースにも出ています。クルマのことを聞くと、向こうです、と。マキシの奥に、ボディカバーが掛けられたボディがありました」

壊れたエンジンを英国へクルマで運ぶ途中、アルプスでアルピーヌやルノーのアイテムで装飾された家を発見する。「アンドレ・ミレシという人物の家です。ルノー5でラリーを戦ったブルーノ・サビーのチームで、メカニックをしていたそうです」

「歓迎してくれて、アルピーヌA110や5ターボ、R8ゴルディーニなどの個人コレクションを見せてくれました。運んでいたターボ2のエンジンを見せると、見事だと驚いた様子でした」

お互いの希望をかけ合わせたレストア

最終的にすべての部品は、英国南西部で専門ガレージを営むギャビン・アリソンへ集められた。彼はアラン・プロストが所有するルノー5のリビルドを手掛け、その筋では評判が高い。

アレクサンドルたちは、ヤーンがどんなクルマに仕立てたかったのか、そして自らがどんなクルマにしたいのか、考えを整理した。「50%はヤーン、50%はわれわれの希望で仕上げることを目標にしました」

ルノー5 ターボ2(1984年)
ルノー5 ターボ2(1984年)

シートや内装は、ヤーンが理想としていたターボ1ではなく、ターボ2のまま。コノリーレザーで仕立て直され、取り外しできるモモ製のステアリングホイールが付けられた。

「ヤーンはコンポモーティブ社製のアルミホイールを準備していました。箱に入ったまま。ところが4本ともフロント用で、2本をリア用に交換してもらいました。カラーは、ランドローバー純正色のピューターに塗っています」

ヤンが18歳の時に初めて手に入れたルノー5は、ブラックだった。このボディも黒で仕上げられた。彼が理想とした姿に近づけるために。

ストロークの長くソフトなクラッチは、APレーシング社製のレース仕様に交換されている。だが、英国の郊外で乗りやすいように、もとへ戻そうか考えているという。

細かい部分まで、モディファイやアップデートが施されている。オリジナルのエンジンブロックには、ホットなカムと高性能なピストンが組まれた。「信頼性を上げる目的もあります。オイルポンプは高圧のものです」。アレクサンドルが説明する。

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